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アジア大会メダル量産の一方で
卓球代表に一線級不在の理由とは?
posted2018/08/26 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
「今、もう勝負は始まっています」
リオデジャネイロ五輪が終わってからしばらくした時期、卓球の伊藤美誠は語った。その言葉が今、あらためて思い起こされる。
現在開催されているアジア大会では、競泳やバドミントン、フェンシングなどさまざまな競技で日本人選手の活躍が目立っている。日本オリンピック委員会が重要な大会と位置づけていることもあり、数多くの競技が現時点で主力とされている選手を代表として送り込んでいる。
その中で、様相を異にする競技もある。例えば柔道や体操、卓球である。
柔道と体操はアジア大会のあとに世界選手権を控えていることから派遣を見送った。そして卓球も男子の水谷隼、張本智和、丹羽孝希、吉村真晴、女子の石川佳純、伊藤、平野美宇、早田ひなといった選手たちがアジア大会を欠場した。
アジア大会よりワールドツアー。
その背景は、世界選手権を控える柔道や体操とはやや異なる。8月21日に開幕したワールドツアーの1大会、チェコオープンへの参加を選手たちが優先したのが理由だ。過去のアジア大会には主力選手が出場してきたことをあわせて考えても、異例と言える。
そこには、現在の日本卓球界の状況がかかわっている。
この数年の国際大会での好成績が物語るように、日本は男子、女子ともに個々に成長を見せてきた。
それは日本卓球界のレベルアップをもたらし、世界での地位の向上、レベルも向上してきたことを意味するが、選手の立場からすれば、別の側面が浮かび上がる。代表争いの激化である。
中でも熾烈を極めるのは、五輪代表。なぜなら個人戦には2名しか出られないからだ。