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日本バスケット界に貢献したい!
米国大学で文武両道目指す鍵冨太雅。
posted2018/08/16 07:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Yoko Miyaji
去年3月、鍵冨太雅(かぎとみ・たいが)はスラムダンク奨学生として、米コネチカット州のプレップスクール(大学進学準備校)、セントトーマスモア(以下STM)での留学生活を始めた。
小学校時代を父の駐在にともないニューヨークで過ごした鍵冨にとって、アメリカは言ってみれば第二の故郷だ。何しろ、試合後のおにぎりは苦手で、ピザのほうがいいというくらいにはアメリカナイズされている。
そして、アメリカの大学でバスケットボールをしたいという思いは、その頃からの夢だった。
高校でアメリカに戻ることも考えたが、アメリカ挑戦の前に日本一という目標があったことと、今年4月に亡くなった田中國明総監督からの熱心な誘いもあり、悩んだ末に、結局、福岡のバスケットボール名門校、福岡大学附属大濠高校に進学した。名門校でキャプテンを務め、世代別日本代表にも選出され、満を持して夢に挑戦するために、漫画家井上雄彦氏が創設したスラムダンク奨学金に応募し、アメリカの大学進学準備のための14カ月間のプレップスクールでの留学生活を勝ち取った。
スラムダンク奨学生史上最も準備万端の選手。
すでに英語は流暢に話すことができて、コミュニケーションにも問題はない。
バスケットボールでも、ニューヨークに住んでいたときに、ハーレムにある強豪AAUチーム(年代別クラブチーム)、リバーサイド・ホークスに所属し、全米大会に出たこともあった。
歴代のスラムダンク奨学生のなかで、最も準備ができた状態での留学だった。
もっとも、そんな彼でも、シーズン開幕直後にはアメリカのバスケットボールの洗礼を受けることになった。
当時スターターとして起用されていた鍵冨は、相手チームの選手がディフェンスで足元にぐいっと入ってきた勢いに圧倒され、思わず身体も気持ちも引いてしまったのだという。
相手は全米でもトップクラスの強豪校で、STMより早くからシーズンを始めていて準備万端で来られたということもあった。
この試合はいくつかのプレップスクールが集まったショーケースの大会で、100人近い大学コーチたちが集まっていた独特の場だったということもあった。その雰囲気におされた彼は、シュートを決められず、何本もターンオーバーをして、自信を失ってしまったのだ。