サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
植田直通、身体能力任せからの脱却。
傾けるようになった耳とガラガラ声。
posted2018/05/31 07:30
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph by
Kiichi Matsumoto
武闘派。植田直通を評するとき、必ずついて回る言葉の1つだろう。
「1対1は僕の強み。相手をおさえ切ることが何よりの楽しみ」
試合中の流血もしばしば。恐れず立ち向かう姿勢に、チームメイトはむしろ「流血した方がすごい」と冗談交じりに言うほどだ。
それもそのはず、もともとテコンドーに夢中だった。中学時代に日本一となり、世界大会に出場したほど。「とにかく相手を倒すことが楽しかった」という。この経験で身体能力と集中力が培われた。
本格的にサッカーを始めたのは高校1年から。類い稀な身体能力を見込まれ、継続的に年代別日本代表に選出される。U-17W杯出場、AFC U-23選手権優勝、リオデジャネイロ五輪では不動のレギュラーだった。
試合後、植田の声がかれている。
武道の精神は、試合後の取材エリアでの応対にも表れる。声をかけられれば必ず立ち止まり、背筋を伸ばして一人一人丁寧に受け答えをする。
そんな植田が、ここ1年、試合後の取材エリアでかれた声でしゃべるようになった。
1つの転機があったから。
「ナオ(植田)の負けん気がほしい」
チームメイトであり、ともにセンターバックを組む昌子源は言う。負けず嫌いの集まりとも言えるプロの世界で、その気持ちの強さは仲間からも一目置かれる。
加入3年目の2015年、チームはヤマザキナビスコカップ(現ルヴァンカップ)で優勝。その光景をスタンドから眺めていた植田は、喜ぶチームメイトの輪に本当の意味で加わることができなかった。
「本当は良くないことだと分かってはいるんですが、素直に喜ぶことができませんでした。自分がそのピッチに立つことができなかった。それが、本当に悔しかった」