ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
敗戦後の空港ロビーで見た幸せな光景。
主将・中田翔が起こす化学反応とは?
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/05/11 10:30
主将として4番を任されている中田は本塁打を量産。5月9日のオリックス戦(京セラドーム)では通算1000本安打を達成した。
野球人生初となるキャプテン。
今シーズン、中田選手の思いの詰まった言動は確実に増えた。栗山英樹監督が、その資質をくすぐる手を打ったのである。昨年11月のファンフェスティバル。中田選手を2018年シーズンのキャプテンに任命することを発表した。場内は騒然。本人も「歓声とブーイングが入り交じってたな」というサプライズだった。エリート街道を歩んできた野球人生で、初めての肩書きの大役を背負うことになったのである。
そして今、立派に務めていると感じている。これまでは、好不調によって感情の波が激しく、グラウンド上での言動にも表れる場面を見聞きしたこともあった。それは、時に全力疾走を含めた走塁などプレーの細部にも明らかに反映されていた。
今シーズンは、変化した。凡打でも足を緩めず、一塁まで駆け抜けるシーンが増えた。後輩たちが活躍すれば、ベンチで無邪気に喜び、納得がいかない打席があっても心を静めてグッとこらえる。
自らの一挙手一投足が、士気に影響する。そんな秘めた自覚を、身内でも感じている。
「人は役割を持たせることで変わる」
強固な和に、なりつつある。移籍2年目を迎えた大田選手は今シーズンのヒーローインタビューで、よく中田選手を引き合いに出す。「中田さんをいい後押しできればいい……」など、ことあるごとに先輩スラッガー、キャプテンを立てている。雑談しながら、その極意を聞いた。
ただイジルのではなく、芯の通ったピュアな思いが隠されていた。「中田さんのチーム。中田さんが元気なかったら、よくない。チームの顔ですから」。シーズン序盤ではあるが、キャプテンを中心に動き始めている。
栗山監督には1つの信念がある。
「人は役割を持たせることで変わる」
その選択は現状、ファイターズの原動力になっている。
「大将」ではなく「主将」が起こす化学反応。そこに、2018年のファイターズの希望が潜んでいるのである。