JリーグPRESSBACK NUMBER
オリンピック×算数ドリルって?
元川崎・天野さんの仕掛けの先に。
posted2018/04/17 07:30
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph by
Masahiko Tejima
オリンピックと算数ドリルが、どう繋がってくるのだろうか?
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)が作成したのは、小学6年生用の算数ドリルだ。今年度(2018年度)は渋谷区の全公立小学校に配布し、授業で活用してもらう。オリンピアンやパラリンピアンが授業に参加する「実践学習会」も開催する。
まだ春だというのに東京都下が“夏日”となった好天の4月12日、最初の「実践学習会」を取材した。冒頭の疑問の答えはそこにあった。
渋谷区内の小学校を訪れたオリンピアンは、2000年シドニー五輪・女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん、2008年北京五輪・陸上競技男子4×100mリレー銅メダリストの高平慎士さんと塚原直貴さんの計3名。スポーツ庁の鈴木大地長官も参加した。
高平の50m全力疾走に校庭が静まり返った。
校庭が驚きで満ち溢れたのは、高平さんが50mを全力疾走した時だ。日中の陽射しは強く、人工芝の緑が少しまぶしいトラックの端から高平さんがスタートすると、汗ばむ陽気の校庭が静まった。
直線のトラックで銅メダリストはぐいぐい加速し、あっという間にゴールラインを通過した。思わず息を呑む、迫力だった。競技に注いできた高平さんの情熱が、ほとばしっていた。
実践学習会に参加した小学6年生は、男女合わせて50人。トラックの脇に広がり、オリンピアンの走りを見守った。「5秒8!」。ストップウォッチを手にした記録係が発表すると、子供たちは一斉に「わぁ」っと、どよめいた。
吹き抜ける風を、児童たちは感じていたのではないか。高平さんが目の前を駆け抜けていった一瞬の疾風を――。そこに居なければできない貴重な体験だった。
驚きもまた、きっかけになり得る。好奇心旺盛な児童たちは、オリンピックに興味を抱いたかもしれない。関心をさらに強めたかもしれない。非日常の刺激を受けて、短距離走者やアスリートへの憧れすら芽生えたかもしれない。