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オリンピック×算数ドリルって?
元川崎・天野さんの仕掛けの先に。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byMasahiko Tejima
posted2018/04/17 07:30
天野春果さんらが尽力して開催された今回のイベント。東京五輪に向けて子供たちに訴えかけるものは大きい。
算数が嫌いな子が五輪ドリルで興味を。
天野さんは2017年2月にフロンターレを離れ、出向中の東京2020組織委員会では「イノベーション推進室」の一員として日夜奮闘している。
算数ドリルがイノベーション? そんな疑問も出てくるだろう。その答えも、やはり4月12日の実践学習会の中に潜んでいた。
実践学習会を終えての、ある児童の感想を紹介しよう。
「算数は大っ嫌いで、計算もすごく苦手。でも興味があるオリンピックで勉強できて、これからは頑張れそう」
わたしは足が遅いんですけど――。別の児童はそう前置きした上で、オリンピアンからのこの日の教えを口にした。
「楽しめばいいことを知りました」
コンマ1秒のさらに10分の1単位でしのぎを削り、オリンピックのメダリストにもなった世界有数のアスリートから、どんなに足が遅くても、走ることは楽しめるとアドバイスされたとしたら……。スポーツに限らず、物事の多面性や価値観の多様性を知るきっかけにもできるのではないか。
Qちゃんも「アスリートの想いを詰め込んだ」。
イノベーションを狭義に解釈すれば、おそらくテクノロジー分野の革新に限られる。しかし、算数ドリルを介したオリンピアン・パラリンピアンとの触れ合いが、多くの児童たちの心を豊かにするきっかけとなるなら、その変化もまた立派なイノベーションではないだろうか。
この解釈は、東京2020組織委員会が掲げている次の大会ビジョンとも矛盾しない。
〈スポーツには世界と未来を変える力がある。2020年は、史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会とする〉
ちなみに、高平さんの感想も紹介しておこう。
「こんなに楽しく学べる算数だったら、もっと勉強して、もしかするとオリンピック選手にはなっていなかったかもしれません(笑)」
大きな手応えを、次のように表現したのは高橋尚子さんだ。
「アスリートの思いも詰め込んだ、そんなドリルができたと思っています」