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8試合でわずか2失点の驚異的堅守。
広島・林卓人「動かぬ」守護神哲学。
posted2018/04/18 08:00
text by
岩崎龍一Ryuichi Iwasaki
photograph by
J.LEAGUE
クリーンシート。
文字通り何も書きこまれていない、真っさらな紙。サッカーでは無失点試合を意味する。守備者は勝利という結果はもちろんだが、自分の心を納得させるために、その理想を求めボールを追うのだろう。チームスポーツの中にも、個人の充足感を追求する人はいる。
8試合を終えて、クリーンシートが6試合。今シーズンのJ1で、驚きの展開が巻き起こっている。サンフレッチェ広島が、失点わずか2と驚異的な堅守を基盤に首位を独走。7勝1分けと、いまだ無敗を続けているのだ。
昨シーズン、J2に陥落した16位ヴァンフォーレ甲府との勝ち点差は、最小の1ポイント。残留争いに巻き込まれた15位の広島が、半年後にこのような快進撃を演じるなど誰が予想しただろうか。
鍛え抜かれた体のサイズは、まるで壁。
J1が現行の18チームになったのが2005年。以降を見ると、第8節を終えて最も失点の少なかったのは4点だ。'06年、'15年の浦和レッズ、'11年の柏レイソル、'12年のサガン鳥栖、'15年のFC東京が記録しているが、広島はそれをもさらに上回る。
その光景はかつて、堅固な守備戦術の代名詞といえる“カテナチオ”を駆使して「ウノ・ゼロ(1-0)」で勝利をもぎ取ったイタリアを彷彿とさせる。そしてアズーリ(青/イタリア代表の愛称)には、常に優秀なGKがいたように、現在の広島のヴィオラ(紫)には、林卓人がいる。
ゴールマウスに立つ、その存在感は抜群だ。188cm、87kg。確かに身長に関しては、Jリーグでも同等のGKはいる。だが近づいてみて驚くのは、鍛え抜かれた体のサイズだ。厚みがあり、幅も広い。ゴール前に立ちはだかれば、まさに存在は壁だ。ストライカーはシュートコースを探すのさえ難しいだろう。