ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムは今も日本を気にかけている。
「ハリルホジッチはどうしている?」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byUEFA/UEFA via Getty Images
posted2017/11/16 11:30
W杯予選で敗退したボスニア・ヘルツェゴビナ代表のスタンド風景。オシム自ら代表監督としてイタリアW杯でベスト8に導いているだけに、悲しみも深い。
アマルが代表監督になることに、複雑な気持ちの理由。
「モラルの問題だ。ボスニアのような国で、家族の中で監督をたらい回しにする偽善がまかり通ることにもなるからだ(長年、オシムは同国サッカー協会の重鎮であり続けたためである)。
私にも躊躇いはあるし、彼もまた日本で仕事があるならその方がいいと思っているが、こうした状況を受け入れねばならないときもある。
彼も長く監督という仕事を続けてきて、代表監督に必要な資質を身につけた。それにずっと同じ人物が代表監督を続けられるわけでもない。いつか交代のときが来る。そのときを逃したら、次のチャンスまでにさらに10年待たねばならないかも知れない。
それで日本では何が起こっているのか?」
サッカーの監督を頻繁に変えるのは感心しないが……。
――浦和がAFCチャンピオンズリーグの決勝に進みました。
「相手は誰でいつやるのか?」
――サウジアラビアのアルヒラルで、第1戦がアウェーで18日に、第2戦がホームで25日におこなわれます。
「浦和もまた経験が豊富だ。ぜひいい結果を残して欲しい。
彼らも監督を(ミハイロ・ペトロビッチから堀孝史に)代えたが、ここボスニアでも監督の交代は日常茶飯事だ。ひとつ試合を落としただけで監督の首も飛ぶ。それが今日の現実だが、もっと監督を大事に扱うべきだとは思う。
頻繁な交代はサッカーそのもののためにならないし、優秀な監督を次々に代えていてはクラブや協会の方針も定まらない。
新聞の売り上げに貢献するだけの交代だ。
選手もころころ監督とサッカーの戦術が変わるようだと、そのチームで何を信じていいのかわからなくなる。
例えば、攻撃志向だった監督から、突然守備的な監督へと代わってしまうこともあるだろう。監督にとっても大きな変更は仕事がやりにくいはずだ。誰もが独自のスタイルを模索する中で、監督はとても難しい仕事を強いられている。
どうやってスタイルを確立すれば良いのか?
攻守のバランスをどうとっていくのか?
頻繁な監督交代が続くと、その度にチーム全体が大きな選択を強いられるうえに、ひとつでも負けるとやり方が問われ議論されるような雰囲気になる。そうしたことが徐々に監督の精神を蝕み、チーム全体の状況を悪化させていくのではないかと危惧するよ」