“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J注目FWは“KKコンビ”先輩の息子!
旗手怜央、心技体ともに父親譲り。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/10/26 08:00
父親が野球選手、息子がサッカー選手のパターンは「高木3兄弟」を筆頭に増えている。旗手もその一員である。
重馬場ピッチも「まったく苦に感じなかった」。
この試合でも旗手は“違い”を見せつけた。ピッチ上には水たまりが浮かぶほど、水浸しのピッチの中でもだ。
他の選手が水たまりにハマって止まるボールや、重たくなったボールに苦戦する中で、「まったく苦に感じなかった」とさらりと言ってのけた彼は正確なプレーとともにパワフルなドリブルとシュートを披露した。
前半立ち上がりにはドリブルで2人をぶち抜き、ペナルティーエリア外から強烈なミドルシュート。25分には浮き球を左サイドで受けると、カットインから右足シュート。いずれも枠をそれたが、“重馬場”のようなピッチをモノともしなかった。
そして1-1で迎えた80分、GKが蹴ったボールのこぼれを前線で収めようとポジションを取った。味方がヘッドですらしたところ、MF杉田真彦の前にこぼれると、彼はとっさの判断をくだした。
「杉田さんのところにボールがいった瞬間に、裏を狙おうと思った。裏を取る動き出しをしたら、狙い通りの浮き球のボールが来た。絶対に雨でボールが止まると思ったので、全力疾走をして先にボールに触ろうと思った」
イメージ通り、ボールが止まるタイミングに合わせて猛スピードで到達すると、ダイレクトで右足を振り抜いた。ボールは水しぶきを上げながらゴール左隅に突き刺さると、旗手は膝を芝に滑らせながら雄叫びを上げた。
旗手のゴールが決勝点となり、順大は首位・筑波大との勝ち点差を2に縮めたのだ。
本来は裏を狙うのが持ち味の旗手だが……。
「先制されたときに『このまま終わったら自分のせい』と思っていたので、何が何でも1点を獲ろうと思っていた。今日はボールが止まるので、DFの背後なら自分達は前向きで優位にプレーできる。そこで試合前から裏に飛び出して、マイボールにできればチャンスになると思っていた」
この決勝ゴールはまさに狙い通りの形だった。しかし、このシーンに至るまでの彼のプレーこそ、大学での大きな成長が隠されていた。
「積極的に裏を狙うのがベスト」
試合前からこう考えていた旗手だが、もし裏を狙い続けてばかりだったら、結果は大きく違っていたかもしれない。