“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J注目FWは“KKコンビ”先輩の息子!
旗手怜央、心技体ともに父親譲り。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/10/26 08:00
父親が野球選手、息子がサッカー選手のパターンは「高木3兄弟」を筆頭に増えている。旗手もその一員である。
高校時代はプロ内定DFをきりきり舞いにしたことも。
三重県のFC四日市時代は、ボランチとしてゲームをコントロールする側だった彼が、全国トップレベルの技巧派集団である静岡学園の門を叩いてからは、弾丸ドリブラーへと変貌を遂げた。172cmと小柄だが、屈強なフィジカルと、抜群のボディバランスに天性のバネとスピードを兼備し、力強いドリブル突破は彼の代名詞になっていった。
静学仕込みのテクニックを3年間みっちりと身体に染み込ませ、それをトップスピードで繰り出す術を身につけた。さらに低い重心と強靭な足腰を活かして、左右両足から繰り出す強烈なシュートを磨き上げていた。
高校時代にもその能力をフルに発揮した試合があった。それは順大進学が決まり、彼にとって高校最後の試合となった高円宮杯プレミアリーグ参入戦だ。この年のプリンスリーグ東海を制した静岡学園は、翌年の昇格を懸けて、プリンスリーグ九州1位の大津との戦いに挑んだ。
試合こそ延長戦の末に2-3で敗れたが、旗手はずば抜けた存在感を示していた。トップ下で出場し、再三切れ味の鋭いドリブルを繰り出して、DF野田裕喜(現・ガンバ大阪)を擁する相手守備陣を翻弄した。
0-1で迎えた55分には、左からの折り返しを受け、鮮やかなワントラップから同点ゴールを叩き込んだ。その後も攻撃の中心となり続けた彼に、視察に来ていたJクラブのスカウトも釘付けになった。獲得に動こうとしたクラブもあったと聞くが、すでに進学が決まっており、諦めざるを得なかったのだという。
台風21号の中、10クラブ以上のスカウトが見守った。
そんな“遅咲きの花”は順大に進学し、一気に花開いたのだ。
10月22日の関東大学リーグ第18節・順大vs.流通経済大でのこと。関東に台風21号が接近し、バケツをひっくり返したような豪雨の中で行われた試合だったが、会場の柏の葉公園総合競技場には数多くのスカウトが集結した。
ざっと列記すれば、以下の通り。
鹿島、川崎、G大阪、浦和、磐田、FC東京、仙台、清水、千葉、岡山などだ。
相手の流通経済大、第2試合の筑波大にもJ内定選手や注目選手がいるが「旗手を観に来た」と明言するスカウトもいるほどで、会場は熱気に包まれていた。