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女子ラグビーW杯の目標はベスト8。
有水ヘッドコーチ「人は変われる」
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph byKiichi Matsumoto
posted2017/08/09 07:30
早稲田大学、日本国土開発などでロックとしてプレーした有水剛志ヘッドコーチ。女子15人制躍進の立役者だ。
「これが正解」と伝えるのではなく、気長に待つ。
――教えてほしいのに教えてくれないとなると、選手はジレンマを感じますね。
「コンサルティングのように『これが正解』と答えを出すのではなくて、選手が自己開発できるように、選手自身が考え抜いて、自分の答えに気付くプロセスがすごく大事。そこに気付けば、絶対自分のものになりますから。ただ、選手によっては、より答えに近い本質的なことを考えさせたりして、男子を指導していた時とは割合を変えるようにしています。先ほどの試合前のジャージプレゼンテーションにしても、『ナショナルチームとしてはこうあるべきだよね』という話は1年間、一切しませんでした」
――就任から1年経った2015年5月、それまで7戦全敗、W杯を目指す日本代表にとって壁であり続けたカザフスタン代表から初勝利を挙げました。
「人は変われる、ということだと思います。カザフスタン戦後、『1年前を思い出して。今、これだけチームとして変われているんだよ』と選手たちに言いました。あの勝利をきっかけに、チームとして自分たちがやっていることに間違いはないと選手は自信を得ることができたと思います」
――そして昨年末、アジア・オセアニア予選でフィジー、香港に連勝し、予選突破を達成。その後おっしゃっていたのが、「W杯本番で勝つには、フィジカルとメンタルを2ランク上げなければならない」と。
「今年6月のアイルランド遠征やその後の国内でのテストマッチ、強化合宿を経て、確実に1ランクは上がりました。2ランクアップまで、あとほんの少し。今の時点で、理想の85%から90%まできています。W杯初戦のフランス戦に100%に達すると、選手たちにも伝えてあります。チームが着実に、一段一段高みに向かっていることは、僕が話す機会がどんどん減っていっていることにも表れています」
――というのは?
「練習中の円陣や、試合前と後、僕が『これは言わなきゃ』と思ったことを、キャプテンやチームリーダーが率先して言うようになりました。練習を始める時も、メニューの説明は僕がしますが、以前僕が言っていた、チームの士気を高める一言二言を、今は全部キャプテンが言っています。エディー(・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ)も、チームが成熟すればコーチの仕事はどんどんなくなっていく、ということを話していますが、そのとおりだと思います」