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女子ラグビーW杯の目標はベスト8。
有水ヘッドコーチ「人は変われる」
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph byKiichi Matsumoto
posted2017/08/09 07:30
早稲田大学、日本国土開発などでロックとしてプレーした有水剛志ヘッドコーチ。女子15人制躍進の立役者だ。
チームの目標はもはやW杯出場ではない。
――チームの目標も、「W杯出場」から「W杯8強」に上方修正されました。
「リオ五輪後の去年の秋あたりだったと思います。女子ラグビーは7人制と15人制が自転車の前輪と後輪のような役割で、相互が密接にかかわりながら、サクラセブンズ、サクラフィフティーンの強化に取り組んでいます。確かにリオ五輪でセブンズは厳しい結果に終わりました。しかし、これまで自分たちが歩んできた"道"を振り返って、この道はどこにつながっているんだ? と前を見据えた時、W杯でベスト8進出は『いける』と思いました。今はその総仕上げの段階に入っています」
実は、有水は15人制女子ヘッドコーチ就任の打診を、一度断っている。無理もない。
「それまで女子の指導はしたことがなかったし、女子ラグビーの現状なんて全くわかっていなかった。予算はない、強化合宿も潤沢に組めない、でもW杯出場がミッション、それは難しい、できないってなりましたから」
では、なぜ有水は翻意したのか。
有水しかいないんだ――これが打診側の最後の口説き文句だった。有水は熟考の末、「俺しかいないのなら、やるしかない」と応じたという。
口説き文句の主は、協会コーチングディレクターの中竹竜二である。有水とは早大ラグビー部の同期で、4年生時にはキャプテンを務めた。その後2006年から2009年まで、母校・早大ラグビー部の監督とFWコーチという間柄だった。
「僕がワセダの監督になるにあたって、有水は絶対に必要な人間だと思ったんです。だから、あの時、半ば無理矢理引退してもらったんですけどね(苦笑)。僕が大事だと思ったのは、組織のために、チームのために、全力を尽くせる人間かどうか。その点で一番信頼できるのが有水という人間です」
その見込みどおり、厳しい環境下でも常に全力を尽くし、女子15人制代表チームをW杯の舞台へと導いた“盟友”に対し、中竹はこう語る。
「愚直で頑固、深く物事を洞察するのが有水というコーチです。サクラフィフティーンは、本当に彼らしいチームに成長しました。かつてない準備を経て、これまでにない新しい形の組織になってきたと思います」
これまで有水が、サクラフィフティーンが歩んできた道のその先に、新たな何かは生まれるのか――。答えは真夏のアイルランドで明らかとなる。