マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
華がなく、社会人は10社以上落ち。
DeNA・宮崎敏郎が超無名だった頃。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/06/19 07:00
社会人入りも、プロ入りも宮崎敏郎はギリギリだった。か細い成功の道を踏破した彼は、今後どんなキャリアを歩むのだろうか。
「来たっ!」と思った時の集中力がすごかった。
そんな技術があったから、試合になると、なかなか死なない。追い込まれても、外の変化球をボールの背中を押し込むようにして、なんとかバットに合わせ、失投がフラッと入ってくるのを我慢強く待つ。ファールはほとんどが一塁側スタンドへ飛んでいった。
そして、「来たっ!」と思った時の集中力がすごかった。打球は必ず、人のいない所へ近く、遠く、飛んでいった。
そんなセガサミー・宮崎敏郎内野手のことを、私はどこかで「こんなに生命力の旺盛な選手、見たことない」と書いて、驚き、あきれ、注目したものだった。
社会人で2年間、バッティング技術と勝負根性で結果を積み上げ、DeNAに入ってもう10年も経ったかと思っていた。
実際はプロ5年目。その風貌、プレースタイルに漂う職人風ベテラン感がそんな印象につながる。そういう選手なのだ。
試合に使ってもらえばもらうほど、打つ。
ちょっと調べてみたら、面白いことがわかった。
2013年 33試合 52打数13安打 .250
2014年 5試合 13打数2安打 .154
2015年 58試合 152打数44安打 .289
2016年 101試合 302打数88安打 .291
出場機会が多い年ほど、成績がいい。試合に使ってもらえるほど、彼はその打撃成績を伸ばしてきた。
試合数が増えれば疲労も増すし、そこで活躍すれば相手チームのマークもきつくなる。きびしいコースを突かれて、なかなか振らせてもらえず、そんな中で故障もあろう。数字はなかなか伸びないものだ。
しかし、宮崎敏郎にはそんな“一般論”を乗り越える心身のたくましさと、確かなバッティング技術があった。それが、彼のコンスタントな打撃成績にそのまま直結しているように見える。