野球のぼせもんBACK NUMBER
先発の未練を捨てセットアッパーに。
岩嵜翔が10年目で得た「ベスト」。
posted2017/06/21 11:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
終わってみれば史上初となる“交流戦V3”を果たしたホークス。だが、その道程では球史に残る屈辱を味わった。
6月14日、ホークスは東京ドームでジャイアンツの山口俊、マシソン、カミネロの継投の前にノーヒットノーラン負けを食らった。
“無安打無得点リレー”はプロ野球4度目で、2リーグ制以降はまだ2度しかない珍記録。もう1回は'06年4月15日にファイターズが3投手の継投で達成したものだったが(延長12回、1対0)、じつはこの時のやられ役もホークスだった。
もちろん何点も取って負けようが、無安打無得点で負けようが同じ1敗には違いない。
しかし、タイミングが悪すぎた。この3日前の試合で主砲のデスパイネが走塁中に右太もも裏肉離れを起こして戦線離脱。内川聖一も頸椎捻挫によるリハビリ中で、続けざまに4番打者を失い傷だらけのところに、たっぷり塩を塗りたくられたわけだ。
ショッキングな敗戦翌日に勝利したのは岩嵜だった。
だが、ズルズル沈まなかったところは、さすがの底力である。
翌日15日にはジャイアンツ投手陣を攻めたてて7対3で快勝。あっさりとショックを振り払ってみせた。ある種、今季のターニングポイントとして秋頃に振り返ることになるゲームになったのではないか。
この試合で勝ち投手になったのが、7、8回とイニングまたぎで投げた岩嵜翔だった。
絶大なる信頼を勝ち取っているセットアッパーである。
それは、広島に舞台を移した交流戦ラストカードの起用を見れば、より鮮明になった。