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呂比須新監督の“フライパン革命”。
新潟を4日間で変えた異例の手法。 

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大中祐二

大中祐二Yuji Onaka

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2017/05/26 07:30

呂比須新監督の“フライパン革命”。新潟を4日間で変えた異例の手法。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

ブラジルで何年にもわたって監督を務めていた呂比須ワグナー。彼がこんなにも“ソフトな監督”になると誰が予想しただろう。

就任会見からたった5日で迎えた初戦。

 試合開始前だけではなかった。後半が始まる前にも、ベンチの前でみんなが肩を組んだ。そして66分、狙いのひとつだった相手CKからの鮮やかなカウンターでホニがゴールを挙げ、1-0で勝利。チームの連敗を4で止めた勝利は、リーグ戦では実に昨年8月20日以来、9カ月ぶりのビッグスワンでの白星だった。

 リーグ第11節を終えてわずか1勝だったチームは、今シーズンから就任したばかりの三浦文丈監督が辞任。片渕浩一郎コーチが暫定的に指揮を執った前節の浦和レッズ戦は、ビッグスワンで1-6と惨敗。ついに最下位に転落した。

 この窮地から脱するべく、チームは呂比須監督の招へいを決めた。就任の記者会見から初陣までは、わずかに5日。4日間のトレーニングで新指揮官が打ち出したコンセプトとテーマは、堅守と速攻を取り戻すことだった。

 呂比須監督が「新潟のDNAだと思う」という堅守速攻をチーム作りの基盤に置いたのは、三浦前監督も同じである。

「まず、ハイプレスをみんなでやりましょう!」

 札幌戦までのごく限られた時間でコンセプトを形にするために、まずシステムが変わった。あいさつ、質疑応答を含めてすべて日本語で通した就任会見の翌日。最初のトレーニングの冒頭でブラジル出身監督は、やはり日本語の大きな声で、選手たちに語り掛けた。

「4-2-3-1をやります。自分の好きなポジションに入ってください」

 トレーニングピッチの自陣に、1トップから中盤、4バック、GKまで、選手全員が散らばっていく。敵陣にはペナルティーエリアの高さに左右、中央と3つのボールが置かれている。さらに敵陣中央あたりに同じく左右、中央、そしてハーフウェーライン手前にも左右と中央にボールが1つずつ。選手がポジションを取り終えると、呂比須監督は一番奥、中央のボールを指し示した。

「まず、ハイプレスをみんなでやりましょう。あのボールにプレッシャーを掛けてください!」

 一瞬戸惑った選手たちだったが、全員がゾロゾロとボールに向かって動き出す。そこに、すかさず監督の声が飛ぶ。

「走らなくていいよ、でも歩くんじゃなくてジョギングでね。それから黙ってじゃなく、しっかりコーチングの声を出しながらやろう!」

【次ページ】 「すばらしい! みんな拍手してください!」

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呂比須ワグナー
アルビレックス新潟

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