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尊敬する柳沢敦を超えた109ゴール。
興梠慎三、貪欲になりすぎない美学。
posted2017/05/30 11:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
J1通算108ゴール。
浦和レッズの興梠慎三にとってひとつの節目であり、目標の数字だった。
今季は開幕前から、あと8ゴールに迫っていた柳沢敦(現鹿島アントラーズ・コーチ)のJ1通算ゴール数を意識していた。
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「ヤナさんのことは尊敬しているけど、いつまでも追いかける存在ではいけない。いまはコーチだし、もう超えていかないと。今季、抜くから」
チームの勝利が大前提としながらも、「先輩超え」を力強く誓っていた。
最前線の1トップから2列目のシャドーに働き場を移し、キャンプでは「少しゴール数は減るかも」と控えめに話していたのが、まるで嘘のようだ。
柳沢から「もう少しだな。あと1ゴール」の励まし。
4月22日、8節のコンサドーレ札幌戦で早くも今季リーグ7点目を挙げ、J1通算107ゴールに。その後、2試合足踏みしたものの、0-1で敗れた鹿島戦では刺激を受けた。古巣のコーチとして帯同していた柳沢から思いを悟られたような言葉を掛けられた。
「もう少しだな。あと1ゴール」
その10日後だった。
5月14日、11節のアルビレックス新潟戦。1-1で迎えた20分、一瞬でマークを外すと、宇賀神友弥の鋭いアーリークロスを丁寧に左足で合わせ、勝ち越しゴールを決める。ひとつの節目だったが、感傷に浸る間はなかった。数日前に子どもが生まれた武藤雄樹に頼まれ、ゆりかごダンスを披露。満面の笑みで腕をゆらす姿に人柄がにじんでいた。
試合翌日、さいたま市内の練習場でリカバリーを終えた後、「108に並んだけど」と水を向けると、ふっと笑顔を見せて、自身のゴールを喜んだ。
「素直にうれしいよ。次は超すから」