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呂比須新監督の“フライパン革命”。
新潟を4日間で変えた異例の手法。
posted2017/05/26 07:30
text by
大中祐二Yuji Onaka
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
5月20日、デンカビッグスワンスタジアムのピッチでは、アルビレックス新潟・呂比須ワグナー新監督の初戦、北海道コンサドーレ札幌戦のキックオフの瞬間が刻々と近づいていた。
この日、スタメンから外れたチーム最年長で副キャプテンの本間勲は、ロッカールームから歩いてベンチへ向かっていた。すると、ベンチのほうからスタッフに呼ばれた。
「早く来い! 肩を組むぞ!」
慌てて駆け寄りながら、自分の後ろからベンチへと向かっている他のメンバーを大きな声で呼ぶ。
「早く、みんなで肩を組むぞ!」
本間が肩を組んだ右隣はメディカルの山本和恒トレーナー、左は控えGK守田達弥だった。目の前のピッチでは、仲間たちが自分のポジションへと散らばっていく。そして山本雄大レフェリーが試合開始を告げるホイッスルを吹いた瞬間、呂比須監督の咆哮を皮切りに、肩を組む全員が雄叫びを挙げた。
自分も周りも、何を叫んでいるのか分からない。けれどもとにかく腹の底から声を出した。ベンチ前で控え選手と監督、スタッフ全員で肩を組む。PK戦ならともかく、今から試合が始まるというときだ。
「そんな経験、初めてですよ。肩を組んだからか分からないけれど、いつもよりはるかに試合に入れ込んでいましたね」
「感じたことがないくらい、一緒に戦っている感覚」
勝ち切るためにせよ、反撃するためにせよ、ボランチとしてピッチに投入される本間に課せられるタスクは重大だ。チームが混乱しているのであれば秩序を回復し、疲弊が見られるのであればパスを循環させて、息を吹き返させなければならない。
「いつもは、できるだけ冷静に試合展開を見極めるようにしているんです。自分まで興奮しちゃうと、いざピッチに入ってもいい仕事はできないですからね。でも札幌戦は違った。入れ込み過ぎるわけではなく、冷静な自分もいるんだけど、これまで感じたことがないくらい、ピッチの中の選手たちと一緒に戦っている感覚になったんですよ」