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呂比須新監督の“フライパン革命”。
新潟を4日間で変えた異例の手法。 

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大中祐二

大中祐二Yuji Onaka

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2017/05/26 07:30

呂比須新監督の“フライパン革命”。新潟を4日間で変えた異例の手法。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

ブラジルで何年にもわたって監督を務めていた呂比須ワグナー。彼がこんなにも“ソフトな監督”になると誰が予想しただろう。

中途半端に取りに行ってのカウンターにまず対処。

 だが、別の主力選手が「トレーニングでハイプレス、ミディアムプレスも確認している。いろいろやる中で、今の自分たちのやり方はこうだ、というのを監督ははっきり示してくれている」と話すように、呂比須監督のサッカーは決して型にはまった、硬直したものではない。

 今、最優先で改善しなければならないのが、中途半端にボールを取りに行って奪い切れず、そこからカウンターを受けて重ねる失点。それが、大分トリニータやFC東京でCBとしてプレーし、'13年から指導者としてタッグを組むサンドロ・ヘッドコーチと、今シーズンの新潟の試合をすべて見直して分析した結果、たどり着いた第一の処方箋であった。

「チーム状況が安定して、順位も上がってきたら、積極的に前からボールを取りに行ってもいい。でも今の自分たちは、まずしっかり守備して、そこから速い選手を生かすサッカーをしないといけない」

CKでの前線の人数を厳守し、ゴールが生まれた。

 呂比須監督のディティールへのこだわりが、札幌戦で最も顕著に表れたのが、66分の決勝ゴールの場面だ。相手CK時の守備方法についても、1つの変更が施された。札幌戦では守備の枚数を1枚削り、カウンターのために前に2人残すことになっていた。

 ところが決勝ゴールが決まる1つ前の札幌のCKのとき、ホニとともに前線に残るべき森俊介がゴール前の守りを固めるために呼び戻された。呂比須監督はテクニカルエリアを飛び出さんばかりの勢いで森をいるべきポジションに付かせようと指示を出したが、このときは伝わり切らずにプレーは進んだ。

 そして66分の右CKの場面。やはりゴール前に戻りかけた森だったが、呂比須監督の指示に気づいて前線に残った。

 果たして新潟はCKから危険なシュートを浴びるが、ロメロ・フランクが体を張ってブロック。そのこぼれ球を森が富澤清太郎につなぎ、富澤のスルーパスからホニが決勝ゴールを突き刺した。

【次ページ】 ミーティングルームから響くフライパンの音。

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呂比須ワグナー
アルビレックス新潟

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