プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「全員が納得することはありえない」
小久保采配は、勝利だけのために。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/03/16 12:05
イスラエル戦後、ソフトバンクの王会長と固い握手を交わした小久保監督。ホークス時代の教え子に王会長は、ねぎらいの言葉をかけた。
投手起用が、土壇場にならないと分からない!?
大会直前には小久保裕紀監督が「抑えは秋吉(亮/ヤクルト)」と語っていたが、1次ラウンド開幕のキューバ戦では牧田和久(西武)が9回のマウンドに上がった。
「皆さんには言っていなかったけど、抑えは牧田と前から決めていた」
試合後に指揮官はこう語った。
ところが2次ラウンド初戦のオランダ戦では1点リードの9回を迎えると、今度はその牧田ではなく則本昂大(楽天)がマウンドに上がった。
「9回は自分がいくのかなと思っていた」(牧田)
「8回ぐらいに『行くぞ!』と権藤さんに言われた」(則本)
この時はタイブレークを睨んでフィールディングのいい牧田を残し、準決勝以降でクローザー起用を考えていた則本を前倒しして送り出したわけだが、当の本人が土壇場まで起用を知らされていなかった。
いずれにしても先発以外は、大まかな順番は決まっているものの、選手自身もギリギリまで自分がどこでいくのかを知らされていない。
そのためブルペンでは何度も肩を作らなければならないなど、難しい状況も生まれている。
起用法を事前に決めて、しっかりと準備をさせる最近のチームマネジメントからは考えられないことでもあった。
この起用法で負けたら、批判を浴びるのは間違いないが。
この起用法が正解なのかどうかは、はっきり言って分からない。
確かに試合の流れ、相手打者との兼ね合い、そのときの選手の調子など、臨機応変に対応できる利点はある。
その反面、選手が自分の役割を把握できず、準備も難しくなるので力を十分に発揮できない可能性もある。
いずれにしても、もし失敗したら起用する側が厳しい批判にさらされることは間違いない。ひょっとしたらチームが空中分解する危険性も孕んでいる。
しかし、小久保監督も投手陣を預かる権藤コーチも、そういう危険性は覚悟の上で今回の起用をしていることだけは伝わってくる。