プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「全員が納得することはありえない」
小久保采配は、勝利だけのために。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/03/16 12:05
イスラエル戦後、ソフトバンクの王会長と固い握手を交わした小久保監督。ホークス時代の教え子に王会長は、ねぎらいの言葉をかけた。
国を背負って戦う厳しさを知った小久保監督。
「とにかく勝とう、勝つために全ての決断を下していくという話を選手に伝えた。全員が納得することはあり得ない。そういう中で最後の勝利だけが、みんなを救える」
小久保裕紀監督がこう語ったのは、宮崎での強化合宿に集合した2月22日のミーティング後のことだった。
勝利以外は全てがゼロになる。
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一昨年のプレミア12。準決勝で韓国に敗れた采配を巡って、大バッシングにさらされた。
それ以来、指揮官が強く心に刻み込んだのは、過程ではなく結果が全てだということだ。
負ければ言い訳は一切許されない。
それが国を背負って戦う厳しさということだった。
青木、小林、田中、秋山、千賀……と動かしてきた。
「勝ってホッとしています」
イスラエル戦後の記者会見。指揮官の第一声が全てを物語っていた。
「クリーンアップは基本的には動かさない」と語っていたが、本番が始まって坂本勇人(巨人)の状態がもうひとつと見ると、青木宣親(アストロズ)を3番に抜擢した。当初は第3捕手と思われていた小林誠司(巨人)を強化試合での動きをみてレギュラーに抜擢すると、その小林が大会のラッキーボーイ的な活躍を見せて攻守のキーマンに成長した。激戦の続いた2次ラウンドでは初戦のオランダ戦では相手先発のバンデンハークとの相性を考えて1番に田中広輔(広島)、8番に秋山翔吾(西武)を起用して打線を動かした。キューバ戦では同点の8回に2安打していた小林に替えて内川聖一(ソフトバンク)を代打に送り、決勝犠飛を引き出した。そしてこのイスラエル戦での千賀の先発起用だ。