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手倉森監督が作ったU-23の「ルール」。
ユニフォームを床に置かない理由。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/07/12 11:30

手倉森監督が作ったU-23の「ルール」。ユニフォームを床に置かない理由。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

自身の成長とステップアップを一番に目指して来た若い選手にとって、「代表は国のためのもの」という発想は新鮮だったことだろう。

「代表は国のため、国民のためにある」

 床へ脱ぎ捨てる選手にも、他意はないだろう。ハーフタイムや試合後の、何気ないルーティーンのひとつに過ぎない。

 ただ、手倉森監督はこれを禁じた。

「日本代表のユニフォームというのは、サッカー選手なら誰もが袖を通したいと考えるもの。そしてもちろん、日本を代表して戦う者だけが着ることを許される。代表は国のため、国民のためにあるもので、誰にでもできる仕事じゃない。我々は国民の誰かひとりだけのためにでも、生き甲斐にならないといけない。そんな大切な仕事をするときに着るものを、床に置いてはいけないでしょう」

仲がいいことと、集団としての覚悟は違う。

「国を代表して戦う」思いが個々の責任感や使命感を磨き上げていく先には、ふたつのメンタリティが生まれる。

 ひとつは「覚悟」である。「と言っても、メンタルだけの話ではないですよ」と、手倉森監督は言う。

「代表チームという場所には、それにふさわしい力を持った選手が来るべきです。そのうえで、その選手が国のために戦う覚悟を身に付けたら、プレーも変わっていく。ピッチのなかにおける態度に、スキがなくなっていく。『これぐらいで、いいや』というプレーは、絶対にしなくなる」

 ふたつ目は、チームへの「忠誠心」だ。

「このリオ世代は、ものすごくまとまっている。チームの立ち上げから、それは感じていた。でもそのときは、仲が良過ぎて負けていた。集団としての覚悟とか野心が、まだ足りなかった。日本の強みは輪の心だし、チームスポーツで何を表現したいかと言えば、日本人らしく組織で機能させること。そのまとまりを個人の覚悟が力強くしたときに、初めて世界へ打って出られる」

【次ページ】 歴代五輪代表でもナンバー1の「まとまり」。

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