“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
次代の守護神候補はストイックの塊。
中村航輔、リオへの道程で得た哲学。
posted2016/07/11 11:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
彼は多くを語らない――。
「すべての面でランクアップするのが、サッカー選手として大事だと思う。すべての面で少しでもベースを上げる。自分の課題は細分化して修正する作業をやっています。その中でも発見はありますが、それは外に言うべきことではないと思っています」
「今、自分の課題や精力的に取り組んでいることは?」という問いに対し、柏の若き守護神・中村航輔ははっきりとした口調でこう答えた。彼はあまりメディアに対して、雄弁なタイプではない。しかし、応対はしっかりと行う。そこには彼の哲学があった。
「メディアへの発言は重要だと思いますが、僕はサッカー選手なので、プレーで示したいと思っています」
プレーで示す。プレーで主張する――。
その姿勢は彼のサッカーに対する向き合い方に起因している。彼を一言で現すと、ストイック。GKというポジションに対して真摯に向き合うだけでなく、黙々と自問自答を繰り返しながら、一歩一歩を歩んで行く。自分の中での整理に余念が無いが、そこには多くの発言は必要としない。今日の中村航輔を築き上げたのは21歳にして、多く積み上げて来たこれまでの経験がベースとなっている。
小学校時代から将来を嘱望された存在だった。
中村は柏レイソルU-12時代から、将来を嘱望された存在だった。GKとしてシュートストップ、キャッチング、ポジショニング、そしてコーチングの質の高さが光り、柏U-15時代から年代別日本代表に名を連ね続け、2011年にはU-17日本代表の不動の守護神として、U-17W杯(メキシコ)に出場。ベスト8入りに大きく貢献した。
'12年には高校3年生でU-19日本代表にも選出され、櫛引政敏(現・鹿島)と激しいポジション争いを演じながらも、正GKの座をがっちりと掴みとった。当然、その年にUAEで開催されるAFC・U-19選手権(U-20W杯アジア最終予選)でも守護神としての活躍が期待されたが、UAEのピッチでゴールマウスの前に立っていたのは櫛引だった。