錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
なぜジョコビッチはいつもいるのか。
錦織圭ら上位陣の「出場義務」制度。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byManuela Davies/Mannys
posted2016/04/08 17:00
ジョコビッチとの通算成績は2勝7敗。2014年全米OP準決勝での勝利からは6連敗となった。
約2年ぶりにたどり着いた、マスターズ決勝の舞台。
実際マイアミでも波乱が相次ぎ、錦織は格上と一度も当たらずに決勝に進出したが、トップ10からの金星を狙う選手たちのエネルギーの大きさを思えばその価値が下がるわけではないだろう。
準々決勝でマッチポイントを5本も握られながら耐えて振り切った相手は、ジョコビッチが「自分がチケットを買ってでも見たい選手」と言っていた稀有な天才肌のガエル・モンフィスだ。
続く準決勝では20歳の大物キラーの勢いを封じた。ニック・キリオスは今季の対トップ10成績が3勝2敗という若手ナンバーワンだ。
この2試合の相手は、ランキング16位と26位という数字では測れない怖さを秘めていたわけだ。
こうして約2年ぶりにこぎ着けたマスターズシリーズ決勝の舞台。王者との9回目の対戦を前に、「フィジカル的にも問題ないし、調子もいい。ノバクとの決勝で失うものはないから、今までとは違うことをやりたい」と話し、いくつか戦術を用意して臨んだが、結果的にはそれを「ほとんど実行できなかった」という。傍目には単なる自滅に見える場面も、「やりたいことをやらせてもらえない」という状況からリズムを崩しているのだろう。
ジョコビッチさえいなければ優勝も……という考え方。
昨夏の全米オープン以来、上海、パリ、ロンドン、全豪オープン、インディアンウェルズ、そしてこのマイアミと、主要タイトルを総なめにしているジョコビッチ。
もはや男子ツアーは〈ジョコビッチ一強〉の時代である。
ジョコビッチさえいなければ……ジョコビッチの出場しないマスターズシリーズはないの? 時々〈新米・錦織フォロワー〉からそんなことを聞かれたりするのだが、上位選手にはグランドスラムのほかマスターズシリーズに出場する義務があるのだ。