錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
なぜジョコビッチはいつもいるのか。
錦織圭ら上位陣の「出場義務」制度。
posted2016/04/08 17:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Manuela Davies/Mannys
マイアミ・オープンの決勝で錦織圭を破って優勝したノバク・ジョコビッチの生涯獲得賞金が、ロジャー・フェデラーを抜いて史上最高額に達した。その額、9800万ドル超、100億円以上……。
マイアミの優勝賞金は約103万ドル、日本円だと1億1000万円くらいになる。今はグランドスラムの優勝賞金が3億円超えの時代だから、1億と聞いても「そんなものか」くらいに思えてしまうが、グランドスラムとマスターズシリーズの間にある賞金の差は、決して優勝までの〈難しさ〉のレベルの差を表してはいない。
スタン・ワウリンカが2014年に28歳で全豪オープンでグランドスラム初優勝したとき、マスターズシリーズのタイトルはまだ持っていなかった。2度の準優勝を経て初優勝を果たしたのは29歳になってからだ。一昨年の全米オープンで錦織を決勝で下して優勝したマリン・チリッチは、マスターズシリーズでは決勝に進んだこともない。
マスターズシリーズ優勝はグランドスラム制覇への登竜門のようにも言われるが、錦織も今季最初のインディアンウェルズ大会が始まる前にこう話していた。
「マスターズシリーズはグランドスラムのメンバーとほぼ同じなので、優勝するにはやっぱり1、2、3位とやって勝たないといけない。ジョコビッチくらいになるとドロー運とかは関係ないけど、僕はドロー運や大会の流れも関係してくるので、優勝はなかなか難しいですけど、上位はいつも狙っていきたい」
マスターズシリーズの方が身体的負担は少ない。
ただ、グランドスラムよりマスターズシリーズの優勝のほうが近いと考えられる根拠はいくつかある。
まず、5セットマッチのグランドスラムに対し、マスターズシリーズは3セットマッチであること。
優勝まで7勝しなくてはならないグランドスラムに比べて、ドロー数の少ないマスターズシリーズは5勝ないし6勝で済むということ。
身体的な負担は軽減される。また、5セットマッチのほうが運や勢いで勝つのが難しく、トップがトップらしい力を発揮するため、3セットなら「1、2、3位」に対してもチャンスが大きくなるかもしれない。しかし、それは同時に自分自身が格下の餌食になる可能性が高くなるということだ。