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ブレーク候補は前年の成績で分かる。
「二軍で長打率4割」を探すと……。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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posted2016/01/25 10:30

ブレーク候補は前年の成績で分かる。「二軍で長打率4割」を探すと……。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

ソフトバンクの上林誠知はブレーク必至。他球団なら即レギュラークラスだが果たして……。

浅村、筒香と比べると山田哲人は1年早かった?

 浅村栄斗(西武)も'11年に打率.268、安打117で小ブレークしている。2年後の'13年に打点110で初タイトルに輝き、同年の初球打ちは12球団ナンバーワンの112である。この屈指の攻撃型・浅村の'10年のファーム成績は打率.278、安打73、本塁打5、打点28である。いたって当たり前の成績だが、長打率.403がやはり高い。

 筒香嘉智(DeNA)が一軍で注目されたのは'12年だ。打率.218こそ低いが、本塁打10、打点45の長打力に注目が集まった。前年の'11年はファームで打率.224(安打49)、本塁打14、打点35。数字からわかるように、不安定さと長打力が同居している。まさか'15年に打率.317、安打157の安定感と本塁打24、打点93の爆発力が同居するとは思わなかった。

 柳田とともに昨年、トリプルスリーが話題になったのが山田哲人(ヤクルト)だ。'13年に一軍で打率.283、安打99を挙げ2年後の安打量産は予感できたが、本塁打3、打点26からは2年後の30本塁打超えが予想できなかった。一軍で小ブレークする前年('12年)のファーム成績も打率.293、安打43、本塁打0、打点8と長打力不足が目立つ。

 当然、これまで紹介した選手のように長打率の4割超えは果たしていない(長打率.374、出塁率.373)。本当ならもう1年ファームにいるところを、山田は1年飛び級して一軍に定着してしまった、ということだろう。

1993年のイチローはやはりダントツ。

 ここまでの話を整理すると、打者の成功法則は「一流選手は一軍に定着するきっかけをつかむ前年、ファームで長打率4割を記録する」である。ちなみに、「一軍に定着するきっかけ」とは、「初めて一軍で40~50安打を放つ」程度を目安にしている。ここまでに挙げた「一流選手が小ブレークする前年にファームで残した成績」をまとめるとこうなる。

<一軍に定着する前年のファーム成績>
 イチロー(当時オリックス) '93年……打率.371(安打69)、長打率.640、出塁率.446
 角中勝也(ロッテ) '10年……打率.307(安打80)、長打率.421、出塁率.374
 浅村栄斗(西武) '10年……打率.278(安打73)、長打率.403、出塁率.322
 柳田悠岐(ソフトバンク) '11年……打率.291(安打73)、長打率.518、出塁率.375
 筒香嘉智(DeNA) '11年……打率.224(安打49)、長打率.457、出塁率.302
 山田哲人(ヤクルト) '12年……打率.293(安打43)、長打率.374、出塁率.373

【次ページ】 2016年の候補を昨年の成績で探して見ると……。

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