詳説日本野球研究BACK NUMBER
ブレーク候補は前年の成績で分かる。
「二軍で長打率4割」を探すと……。
posted2016/01/25 10:30
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
NIKKAN SPORTS
イチローがブレークしたのは22年前の1994年で、成績は打率.385、安打210、本塁打13、打点54、盗塁29と記録ずくめだった。ここからスタートして日本球界通算1278安打、メジャー通算2935安打、日米合算4213安打という膨大な安打数を積み上げていくのだが、日本でブレークする前年の'93年に、実はファームでもモンスター級の成績を残している。
48試合、186打数69安打、打率.371、本塁打8、打点23、盗塁11
さらに凄いのが長打率.640と出塁率.446という数字。8割超えれば一流と言われるOPS(長打率+出塁率)が10割超え(1.086)の迫力である。のちに世界にはばたくイチローなら当然のような気もするが、では他の選手はどうだったのか。
後に一流と言われるようになる選手が、一軍で成果を出す前年、ファームでイチローのような成績を残していたのだろうか。
柳田が2012年に残した長打率.518の驚異。
トリプルスリーを達成した柳田悠岐(ソフトバンク)の本格的な一軍デビューは'12年で、その成績は打率.246、安打48。前年の'11年はファームで打率.291、安打73、本塁打13、打点43という記録を残している。
何より注目すべきは長打率の高さである。イチローにも見られた一軍でブレークする前年のファームに灯した小さなサイン、それが長打率.518だったとは言えないだろうか。
データがイチローと柳田だけでは心もとないので、他の選手も調べてみた。本格的に一軍入りする前年、彼らはファームでどのような成績を挙げたのだろうか。
角中勝也(ロッテ)は、独立リーグの四国アイランドリーグ出身で大学生&社会人ドラフト7巡指名でプロ入りした。中心選手に成長するきっかけになったのは'11年に一軍で挙げた打率.266、安打41で、翌'12年には打率.312で首位打者に輝いている。
この角中が'10年に残したファームの成績が打率.307、安打80、本塁打2、打点30だった。2年後に首位打者になる予兆が打率と安打に現れているが、本塁打と打点は振るわない。それでいながら長打率は.421(出塁率.374)と高いレベルなのが面白い。