詳説日本野球研究BACK NUMBER
ブレーク候補は前年の成績で分かる。
「二軍で長打率4割」を探すと……。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/01/25 10:30
ソフトバンクの上林誠知はブレーク必至。他球団なら即レギュラークラスだが果たして……。
2016年の候補を昨年の成績で探して見ると……。
彼ら以外でも小ブレークする前年、ファームで長打率4割以上を記録した選手はいる。中村剛也(西武'04年=長打率.603)、糸井嘉男(当時日本ハム'07年=長打率.579)、中田翔(日本ハム'09年=長打率.674)などである。
高い長打率を残した選手が翌年一軍で活躍する現象は、考えてみれば不思議だ。けっしてホームラン打者ではないイチロー、角中でも高い数値を弾き出しているのだ。一軍で活躍するような選手はチャンスメーカータイプでもスイングが強く、打球も鋭いので、ディフェンス面の甘い二軍では長打になることが多い、ということかもしれない。
それらを踏まえて、今年ブレークしそうな選手を探してみた。条件は昨年ファームで200打数以上立って、長打率4割をマークし、さらに25歳までの選手である。
中谷将大(阪神)は'12年のフレッシュオールスターのMVPで、ファームでの実績は昨年の打率.290、長打率.424でわかるように十分積んできた。若手を抜擢しない歴代監督の選手起用に一軍昇格を阻まれ続けてきたが、今年は若手の抜擢に意欲を燃やす金本知憲新監督が就任、チャンスがめぐってきた。
広島では磯村嘉孝(長打率.403)と美間優槻(長打率.407)が4割超えを果たしている。磯村は捕手、美間は三塁手が本職で、ともに一軍で手薄なポジション。美間はファームでチーム3位の7本塁打を放ち、長打力に特徴がある。
乙坂智(DeNA)は、横浜高時代から足の速さに定評がある。'11年夏の甲子園大会2回戦、健大高崎戦では1番ライトで出場、第4打席で送りバントをして、このときの一塁到達タイムが3.62秒というとんでもない速さだった。この俊足がかえって走り打ちの要因になっていたのだが、昨年の長打率.416が示すように徐々にスイングに強さが増してきた。
ソフトバンクの上林は文句なし。
パ・リーグも逸材が目白押しである。上林誠知(ソフトバンク)は高校卒2年目の昨年9月以降に一軍で安打を量産して、打率.318を記録した。ファームでは打率.334(安打103)、長打率.526と文句なく、強豪のソフトバンクでも中心選手に育つ可能性を秘めている。
浅間大基(日本ハム)も凄い。高校卒1年目にして一軍で打率.285(安打37)、長打率.377を記録。ファームでは打率.300(安打78)、長打率.450と上林同様、文句のない成績を残している。ライバルチームでポジションも同じ外野手2人の今後10年以上の対決を見ていきたい。
同じ日本ハムの石川慎吾も、ファームで長打率.515という迫力だ。一軍で43試合に出場し18安打放っているのだから、本人の頭の中には「ファームの成績で評価してほしくない」という思いがあるだろう。チーム内にライバルが多いが、ここを勝ち上がればリーグを代表する強打者に育つ可能性がある。