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エンゼルスを失脚し、マリナーズに。
監督との抗争に敗れたGM、反撃へ。
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ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2015/12/29 11:00
![エンゼルスを失脚し、マリナーズに。監督との抗争に敗れたGM、反撃へ。<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/f/a/700/img_faba5f7a2e9674a6eee1e6a7161f39e2103707.jpg)
マリナーズ新GMのディポート氏。来季のチーム編成の最優先事項として、シーズン後にFAとなる岩隈久志との再契約を挙げていた。
「エンゼルスは監督とGMのどちらを選ぶのか?」
2011年12月にエンゼルスGMに就任したディポートは任期中、57歳の名将マイク・ソーシア監督と何度も対立した。最初にそれが表面化したのは、チームの打撃不振を理由に、ディポートGMがソーシアの友人マイク・ハッチャー打撃コーチ(当時)を独断で解雇した時だった。
2013年のオフには「エンゼルスは監督とGMのどちらを選ぶのか?」という事態にまで直面。和解した2014年に5年ぶりのプレーオフ進出を果たしたものの、両者の対立が再び表面化した2015年7月には、ディポートGMが引責辞任に追い込まれたのだ。
監督とGMはどちらが上司ということはないのだが、GMが新監督選びの際に面談することはあっても、その逆はない。とくに昨今のGMはアスレチックスのビリー・ビーンGMのように現場に介入して“チームの哲学”を徹底的に現場に浸透させたがる人物も多く、ディポートGMとソーシア監督のような衝突を避けるために、GMの“イエスマン”となれる監督を選ぶ傾向にある。
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そういう意味ではGMが上司で監督が部下という見方もできるのだが、ソーシア監督はディポートGM就任時、すでにエンゼルス監督を12季も務め、2002年のワールドシリーズ優勝を含めア・リーグ西地区優勝が通算5度、プレーオフ進出6度というエンゼルスの重鎮である。経営者からの信頼も厚く、オーナーのアルテ・モレノに対しても絶対的な発言力を持つと言われており、ディポートGMの部下というよりは上司に近い存在だった。
ディポートGMは言わば、上司に逆らい失脚した。
メジャーリーグではしばしば、そんな風にチームに内紛が起きて「監督を取るのか? それともGMを取るのか?」という緊急事態が起こる。
そんな噂が囁かれた2013年のオフにはオーナー裁定で両者和解となったものの、2015年夏のミーティングでは、データ活用を巡る見解の相違について、主力選手(アルバート・プーホルス一塁手だと言われている)がコーチ陣を擁護する発言をして、ディポートGMが孤立。エンゼルスは「監督を取った」のである。
違う言い方をすれば、ディポートGMはエンゼルスという会社組織の中で上司に逆らい、上司を支持する経営者や同僚にそっぽを向かれ、現場に対する統率力を失って失脚してしまったのだ。
断腸の思いではなかったかと思う。