メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
前田健太を獲得した2人の名物GM。
セイバーと保守派をつなぐ男たち。
posted2016/01/13 10:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
『Moneyball: The Art of Winning an Unfair Game(マネーボール)』が本国アメリカで出版されたのは、2003年の夏だった。低予算球団のアスレチックスが、独自の選手査定法やドラフト戦略、狡猾なトレードなどを用いて金権球団を打ち負かすノンフィクションは広範な読者を獲得し、2011年にはブラッド・ピット主演で映画化もされた。
同書内で重要な位置付けにあるセイバーメトリクス(野球の統計分析)はかつて、「既存の成績表では表せない数値を発掘した」と評価される半面、「野球経験のない“算数オタク”が作り出したモノ」と偏見を持たれていた。ところがアスレチックスのチーム構築法を参考にしたレッドソックスが成功を収めて以来、各球団がデータ部門を設置するなど、今では広範に受け入れられている。
とは言え、セイバーメトリクスを重用する急進派のゼネラル・マネージャー(以下GM)の成功率は微妙だ。『マネーボール』の主人公ビリー・ビーンGMの右腕だったポール・デポデスタや、ジョッシュ・バーンズといった人々は急進派としての眼力を期待されてドジャースやダイヤモンドバックスなどでGM職に就いたものの、レッドソックスを86年ぶりの優勝に導いたセオ・エプステイン(現カブス編成本部長)のような名声を得ないまま、失脚している。
前田健太を獲得した2人の中心人物。
1月、前田健太投手(前広島)を獲得したロサンゼルス・ドジャースも急進派GMと、「GMを超えたGM」とも言うべき役職のPresident of Baseball Operations≒編成本部長を擁している。役職の序列に従って書き直せば、アンドリュー・フリードマン編成本部長とファーハン・ザイディGMの2人で、この30代コンビは2人とも過去に成功を収めてきた人たちだ。
フリードマン編成本部長は、1998年のリーグ参入以来10年連続負け越しという弱小球団レイズを、2005年のGM就任以来9年で4度もプレーオフに進出する常勝球団に変えた。メジャー最低級の低予算のままで、岩村明憲内野手がいた2008年には球団史上初のリーグ優勝を果たしている。