オリンピックへの道BACK NUMBER
基礎点はもう上限、伸ばせる要素は?
羽生結弦は一体どこまで行く……。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2015/12/14 16:00
「厳しい練習に耐えてくれた(自分の)身体に感謝。そして応援して下さっている方々皆さんに感謝したいです」とコメントした羽生。
羽生がさらに点数を伸ばす余地は……。
フリーでのGOEは、4回転サルコウ、4回転トウループ、トリプルアクセル-ダブルトウループ、コレオシークエンス以外の要素は、まだ上限には達していない。
そしてファイブコンポーネンツは満点で100点。羽生は98.56だから、差は1.44。
上限の得点の合計は、225.79になる。
実際に大会で出した得点は、219.48。つまり、6.31がここから上積みすることのできる数字だ。
合計すれば、339.44が、マックスの得点ということになる(*もちろん、4回転トウループではなく4回転ループにするなど、より基礎点の高いジャンプに変えれば、理屈の上ではもっと高い得点を出すことはできるが、先々はともかく、今はさておく)。
他選手が完璧に滑っても、まだ羽生には届かない。
こう考えると、羽生のグランプリファイナルでの330.43の凄みがあらためて分かる。もはや、改善できる部分はごくわずかしかないのだ。
しかも、今回のプログラムの構成では、仮にあらゆる部分でパーフェクトだったとしても、銀メダルのハビエル・フェルナンデス(スペイン)もパトリック・チャン(カナダ)も羽生を追い越すことはできなかったはずだ。
ファイブコンポーネンツはショート、フリーともに満点が共通である以上、選手個々の上限はない。だから、理屈の上では、羽生に勝負を挑むとすればショート、フリーで計6つの4回転ジャンプを入れて技術点で上回ろうとするボーヤン・ジン(中国)のような方向性しかない。
そう考えてみると、羽生の演技の恐るべき価値と、到達した地点がどれほどの高みなのかが分かる。
NHK杯では、「ここまでできるのか」と、ただただ驚きがあった。そこから短期間で迎えることになったこの大会で、疲労がなかったはずはない。
しかも、NHK杯が終わったあと、コーチのブライアン・オーサーは拠点であるカナダ・トロントに戻ったが、羽生はトロントに戻らず、国内で練習していたという。