フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
羽生結弦が競技の次元を1つ上げた!
GPファイナル、史上最高難度の戦い。
posted2015/12/15 11:30
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
「正直、このプレッシャーの中でよくできたな、とびっくりしています。皆さんの声援のおかげだと思っているし、プラス練習が思うようにできたこと、その練習に耐えうる体があることは、ものすごく幸せなことなんだと感じています」
バルセロナで開催されたGPファイナル決勝の翌日、羽生結弦は一夜明けの会見でそう口にした。NHK杯でSP、フリー、総合点と全てで歴代最高スコアを更新させてから、2週間。果たして羽生は、あの演技を超えることができるのか。いや、あのレベルの演技を再び繰り返すことができるのだろうか。世界中から集まったスケート関係者たちのそんな疑念を、羽生はみごとに蹴散らして見せたのだ。
再び更新された最高点。
SPのショパン『バラード第1番』、そしてフリーの陰陽師『SEIMEI』ともに、完ぺきな演技だった。長野のNHK杯の時と同じようにSPで2度の4回転、フリーでは3度の4回転を入れて、最後までノーミスで滑りきった。SPは110.95、フリー219.48、総合330.43点と、3つとも新たな世界最高記録を出して見せた。
「(NHK杯の前までは)これまでの人生の中で、SPとフリーの両方をノーミスで滑ったのは、地方大会くらいしかないんです」と苦笑する羽生。だがバルセロナでは、公式練習中もジャンプミスはほとんどなかった。現在の羽生は、まるで4回転を3回転ジャンプのように軽々と跳ぶ。驚くほどの、安定度だった。
得点が全てではない、と羽生。
「(2位に終わった)カナダからNHK杯までの練習は、自分史上最大初めてというほど追い込んでやってきた」と羽生。
その一方で、記録を追っていくだけが目標ではないことも明言した。
「パトリック(・チャン)の演技しかり、ハビエル(・フェルナンデス)の演技しかり、難易度だけが全てじゃないと思う。ジャンプが決まるからこその演技だけれど、ジャンプがやっとプログラムで全部決まるようになってきて、芸術性というものに関して自分らしく表現できるようになってきたかなと思う。そういうものすべてを目指してやっていけたらいい」と、表現に対するこだわりを口にした。