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ロッテ、日ハム倒して下克上へ前進!
ファーストS突破率100%の方法論。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/13 12:50
“5年周期日本一”伝説へ向け、伊東勤監督率いるロッテがまずファーストステージを制した。
“下克上”を体現する涌井の143球と継投策。
ロッテはファーストステージの3試合に、松永昂大、益田直也、大谷智久、そして、故障離脱した西野勇士に代わり守護神を務める内竜也と、勝ちパターンを投入し続けた。これには、相手の栗山監督も「CSにはリードもビハインドもない。むこう(ロッテ)だって勝ちパターンのピッチャーをつぎ込んできていたわけだから。野球の試合はどんなことでも起こり得ると知っているからこそ、そういう采配をする」と、その積極性を認めていた。
“下克上”を体現してきたチームの引き出し――それがはっきりと表現されたのが、第3戦での継投だった。
レギュラーシーズン最終戦で延長10回、137球を投げてから中5日でマウンドに上がった涌井秀章を、7回途中の143球まで引っ張ったことも驚きといえば驚きだった。しかしそれは、落合英二投手コーチが「信じている分、代え時は難しくなかった。涌井で負けたのなら、という気持ちは正直ありました」と全幅の信頼を置いており、「行けるところまで涌井」という思惑は首脳陣の間で一致していたはずである。
「代打・大谷」で絶対的な勝利の方程式を壊した。
決断を迫られたのは2-1の8回。3番手の大谷智久が1死から連打を浴び一、三塁と、この試合最大の山場を迎えた。この時のベンチの心境を、落合コーチが代弁する。
「うちはこれまで、勝ちパターンの継投は決まっているわけですから、(回またぎの継投という形で)その形を崩す、『大谷を途中で代えてまで福岡には行きたくない』という思いはありました。でも、あの場面では絶対に三振が欲しかった。ベンチに残っているピッチャーで三振を取れるのは内しかいなかった。だから行ってもらったんです」
絶対的な勝利の方程式を壊す。大英断を下せたのは、日本ハムベンチが「代打の切り札」として大谷翔平を打席に送ったことも大きかった。