オリンピックへの道BACK NUMBER
浮き彫りになる候補地選考の問題点。
'22年北京冬季五輪、混迷の道程。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2015/08/04 11:30
7月31日、クアラルンプールで行われた総会で、2022年冬季五輪開催地決定を告げるトーマス・バッハIOC会長。
IOC委員100名のうち11名が総会を欠席する事態に。
結果、北京とアルマトイが残ったが、1次選考時の評価はどちらも決して高いとは言えなかった。アルマトイは全般に低い評価にとどまり、北京も雪不足や環境問題などが指摘されていた。
そういう背景もあったからだろう、オスロが撤退を決めたときのIOCのコメントに本音が表れていた。
「オスロが将来に投資する素晴らしい機会を失い非常に残念」
迎えた総会は、IOC委員100名のうち11名が欠席。棄権も1名いた。その事実は、どの都市が優れているか、よりよい都市はどこかという以上に、選ばざるを得ない状況に陥った今回を表している。
IOCのバッハ会長が決定後に述べた、「難しい選択でした」という言葉も印象的だ。
財政的な安定度などを考えれば、北京になったのは妥当かもしれない。実際、事前には、北京で決まるという予測が大半だった。
数々の懸念から、投票結果は予想以上の僅差に……。
ただ、2018年の平昌五輪に始まり、東アジアで夏冬3大会連続での開催は抵抗があったに違いない。
また、北京の開催計画では、約160kmも離れた張家口で多くの雪上競技を行なうことになっている。東京を起点にすれば、越後湯沢あたりまでの距離だ。一部競技が分散することはあったし、室内競技と雪上競技の場所が離れるのは通例だが、ここまで離れた場所で、はっきりと二分する形を採るのはどうなのか……。
投票は44対40だった。事前の予想以上の僅差だったのは、数々の懸念から、アルマトイに票を投じる動きがあったからに相違ない。
また、招致の最後の場面で、アルマトイはトップフィギュアスケーターの一人であるデニス・テンを登場させ、北京が元NBA選手だった姚明を登場させた。アルマトイがウインタースポーツのトップアスリートを連れてきた、いわばストレートな冬季オリンピック招致を打ち出したことでの得票もあっただろう。
いずれにせよ、2022年の招致活動の一連の流れがあらためて残したのは、オリンピック開催の難しさが増していることだ。
IOCもそれを察知しているからこそ、昨年末に改革プラン「アジェンダ2020」を打ち出した。