スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
サマー・トレードと玉突き現象。
~プレーオフを懸けた夏の風物詩~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2015/07/31 18:00
ロイヤルズにも早速溶け込んだ気配をかもし出しているジョニー・クエト。トルネード風の投球フォームも個性的な、見ていて楽しい投手である。
先発陣が苦しいロイヤルズが獲得競争に名乗り。
そんなクエトを、喉から手が出るほど欲しがったのが、ア・リーグ中地区の首位を走るロイヤルズだ。昨季、ワールドシリーズ進出の原動力となったブルペンは、ケルヴィン・エレーラ+ウェイド・デイヴィス+グレッグ・ホランドの伝説トリオが健在だし、それに加えてライアン・マドソン(44試合に投げて防御率=1.69)とフランクリン・モラレス(42試合に投げて防御率=2.16)が好調だから、盤石の態勢といってよいだろう。
それにひきかえ、先発陣は苦しい。主戦投手ジェームズ・シールズ(FAでパドレスへ)の抜けた穴を補うはずだったヨルダノ・ベンチュラやダニー・ダフィといった20代の若手が伸び悩んで4点台の防御率に苦しめられ、30代のクリス・ヤング、ジェレミー・ガスリー、ジェイソン・バルガスが、先発してもなかなか6回を投げ切れない(バルガスはトミー・ジョン手術を受けることになった)。唯一ぎりぎりの合格点といえるエディンソン・ボルケス(防御率=3.21)でさえ、21試合に先発して126回しか投げていないのだから、首脳陣もさぞかし頭が痛いことだろう。
だとすれば、クエトの獲得は願ったり叶ったりだ。肘痛(今季5月下旬から6月上旬の間に13日の休みを取っている)という不安は残るものの、もともと身体は丈夫だし、潜在能力の高さを考えれば、プレーオフへの準備は大きく前進したと見てよいのではないか。
他の大物選手にも玉突きが発生。
では、クエトのトレードは、他の大物選手の動きを加速するのだろうか。
玉突き第1弾は、ロッキーズの大看板だったトロイ・トゥロウィツキー遊撃手とブルージェイズの中心選手だったホゼ・レイエス遊撃手との交換だ。このトレードには、ロッキーズのヴェテラン救援投手ラトロイ・ホーキンスも含まれている。電撃的な報道だったが、もしブルージェイズがポストシーズンに進出することがあれば、トゥロウィツキー獲得の功績ともてはやされるにちがいない。