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「バイクのポテンシャルを超えた」
若き天才マルケスのジレンマとは? 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2015/06/06 10:40

「バイクのポテンシャルを超えた」若き天才マルケスのジレンマとは?<Number Web> photograph by Satoshi Endo

圧倒的な強さを誇った昨季に比べ、今季は他のライダーの後塵を拝するシーンが多いマルケス(ゼッケン93)。タイトル争いは盛り上がっているが……。

「変わったのは、ライダーとして進化してしまったこと」

 その原因についてマルケスは、ブレーキングがうまくいかないことを一番の理由に挙げている。

「去年まではコーナーの進入でリヤがスライドしても、止めたいところで止まった。それが今年は止まらないのでオーバーランしてしまう」

 確かに、そういうシーンを開幕戦から何度も見ている。さらにこの数戦は、ホンダのパワフルなエンジンに苦戦しているというコメントも加わった。

 そこで、ホンダRC213Vの現状を中本修平HRC副社長に尋ねてみた。

「'15年型は、エンジンも車体もそれほど大きくは変わっていない。変わったのは、マルクがライダーとして大きく進化してしまったこと。それに尽きるね。

 データにそれがはっきり出ているし、ブレーキングポイントもいままでよりも一段と深くなっている。当然、いままでの状態では止まらない、曲がらないということになるし、それに応えようとして、結果として違う問題も生まれてくる。

 いまはマルクのリクエストに応えることができていない。でも、この2戦は車体にかなり手を入れているし、だいぶ良くなってきている」

 マルケスは、経験を積むごとにどんどん成長している。

 一昨年は6勝でチャンピオンを獲得したが、昨年はシーズン最多の13回のPPと13勝という新記録を樹立して2連覇を達成。研ぎ澄まされていくライダースキルはとどまるところを知らない。

「彼の能力が完全にバイクのポテンシャルを超えた」

 そして中本副社長は、こうも語ってくれた。

「『キミのリクエストに応えられないから、ブレーキングをもっと早くしなさい』というのは簡単だよね。この2年間は、『これ以上はバイクを良くできないから、ライディングでなんとかしてくれ』ということはあった。だけどいまは、彼の能力が完全にバイクのポテンシャルを超えてしまった。

 その能力に応えたいとみんな頑張っている。確かに、今年はヤマハとドゥカティが進化した。もちろんホンダも進化しているけれど、いろんな不運もあって結果につながっていないだけ。

 タイトル争いは確かに厳しくなったけれど、心配はしていない。まだ先は長いからね。マルクは6戦して1勝。勝てなかった5レースについても、ぜんぶ説明がつく。そりゃ、マルクはフラストレーションをためているだろうけれどね。そのマルクにスタッフは、ずいぶん助けられているんだよ。なんたって彼は笑顔を忘れないしね」

【次ページ】 マルケスのリクエストに応えるマシンが完成したら……。

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