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元日本代表、現さいたま市議1年生。
都築龍太が語る転身の理由と「夢」。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakashi Shimizu
posted2015/06/02 10:30
すっかり議員らしい姿になった都築龍太だが、話し方や表情の端々に、現役時代以来の芯の強さが見え隠れする。どんな第二の人生が彼を待ち受けているのだろうか。撮影協力:浦和ロイヤルパインズホテル
地元の集まりに顔を出す中で見えてきた現実。
再出馬を決めた都築の元に、選挙を手伝ってくれた人たちが再び集まってくれた。埼玉スタジアムのある緑区は近年開発が進んだ地域だが、長年その土地で暮らす人たちも多い。彼らに誘われて自治会や消防団などの集まりに顔を出し、子どもの通う学校のPTAの活動も含めて、さまざまな地域活動に参加する。徐々に、地元の現実が見えてきたという。
「条例を覚えるとか、もちろん勉強もしました。でも条例をすべて覚えても、それを使いこなせないと意味がないんです。やっぱり実際の生活に何か問題があった時に、それをどうやって解決するかというのが最初にないと、学んでも身につかないんですよね。だからいろいろな人に会い、話を聞いてはじめて勉強が本物になるんです。それをすごく感じています」
「先生」という呼び名には願いが込められている。
夢先生の活動で訪ねた地方自治体でも、時間を作っては教育委員会の人などと話し合った。
「4年間無職みたいなものでしたから、時間だけはいっぱいあったので」と都築は当時を思い出して笑う。さまざまな活動を経て、議員になるための勉強が進むのと同時に、「地元をよりよくしたい」という想いが募った。そして支持者という仲間が増えるにつれて、都築は人のために頑張ろうという気持ちが強くなったという。
その中で都築は、それまでの自分が自分中心にしか物事を考えられなかったこと、人間としての力が足りなかったことを思い知ったに違いない。そして、そんな自分を地域の代表として選び、応援してくれる人たちの志に打たれたという。
「年輩の方々が、当選する前から僕のことを『先生』と呼んでくれるんです。その呼び名の中には、『地元を良くしてほしい』という願いが込められている。長年地元を支え続けてきた人たちの想いが詰まっているんです。正直言えば、先生と呼ばれるのは居心地が良いわけじゃないんです。でも、呼んでくれる人たちのことは尊敬しています」
若い人たちの投票離れが問題視されているが、実は都築もまたそんな投票しない1人だった。選挙に興味を持てない世代が投票するためのきっかけになればと、自分が立候補した県議会選挙で「初めての投票で自分の名前を書いた」ことを公表している。