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ドルトムントの絶不調を徹底解剖!
全ては財政状況の改善から始まった。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/03/27 10:40
復調の気配を見せている香川真司だが、チームを覆う空気は決して好転したわけではない。ELを逃せば戦力の大整理も必要になるだけに、なんとしてもそれは避けたい状況だが……。
財政状況の改善が、迷走の始まりだった。
このように、移籍市場で大金を費やすことが可能になった背景にあるのが、クラブの財政状況の改善だ。
'10-'11シーズンに優勝してから、年を追うごとにスポンサーやCLで収入を大きく増やし、クラブは成長してきた。その過程で、香川がユナイテッドに去った後の'12-'13シーズン開幕前にはスタジアムのスポンサー席などの拡張、改修工事にも取り組んでいる。また2014年には、ユニフォームの胸スポンサーであるエボニック、ユニフォームサプライヤーのプーマ、そしてホームスタジアムのネーミングライツを取得しているジグナル・イドゥナの3社がクラブの株主になったことで、およそ1億4000万ユーロの資本金を手にしている。
そうした努力の甲斐もあり、2005年には2億ユーロほどあった負債も、昨年11月には完済している。
選手の年俸が高騰し、欧州カップ戦に出られないと……。
だが悪いことに、今後はドルトムントの状況が悪化することが予想されている。
選手の給料が高騰しているのだ。例えば、以前は150万ユーロ程度だったロイスの年俸は、今年2月の契約更新を機に約800万ユーロに膨れ上がった。
ロイスのかつての年俸からも明らかなように、以前のドルトムントは給料が安いことで有名だった。80000人を越えるファンが作り出すホームスタジアムの雰囲気や、クロップの指導に魅力を感じた若くて野心のある選手を集めていたのだ。
たとえ年俸が高騰したとしても、CLでベスト4の常連になったり、リーグタイトルをコンスタントに獲得できる状態ならばさほど問題はないのだが、そうでなければその枷がクラブの財政状況に重くのしかかってくる可能性は高い。
ユベントスとの試合日にビルト紙に掲載されたインタビューのなかで、ツォルクSDもこんなことを話している。
「もし、(来シーズンの)ヨーロッパのカップ戦に出られないようなことがあれば、我々の抱える選手たちは少しばかり多すぎるということになるね。常に新しい選手への投資はされるべきだが、出られないとなればそうした動きも予算オーバーということになる」
今では、この発言が現実味を帯びている。