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ドルトムントの絶不調を徹底解剖!
全ては財政状況の改善から始まった。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/03/27 10:40
復調の気配を見せている香川真司だが、チームを覆う空気は決して好転したわけではない。ELを逃せば戦力の大整理も必要になるだけに、なんとしてもそれは避けたい状況だが……。
国内でも、ドルトムント対策は浸透しきっている。
さらに、前線で起点を作れるフォワードが不在であるために、遅攻になると途端に迫力が失われる。それでもどうにかしてゴールを奪おうとして前がかりになった結果、今度は背後に広大なスペースを作ってしまい、相手チームにそこを突かれることになる。
そしてスピードや反応の衰えが指摘されるGKバイデンフェラーには、一対一の局面でのシュートストップ率が低下しているというデータもある。
こうしたドルトムントの弱点が問題になるのは、何もユベントスのような強豪チームだけが相手の時ではない。
最近ではブンデスリーガの舞台でさえ、対戦する大半のチームが自陣に引いてドルトムントを前に出させておいて、ボールを奪うとフンメルスの背後をつくという戦いを徹底している。フンメルスは元々スピードがあるタイプではないのだが、最近さらにそこを狙いやすくなったのには理由がある。
2列目から前に攻撃的な選手を起用するあまり、相手ボールになったあとの前線からの守備がルーズになり、簡単にパスを出されてしまったり、ときにはカウンターでのドリブル突破を簡単に許す状況に陥っているのだ。
バイエルンとの差は、勝ち点を獲得する安定感。
忘れてはならないのは、既に昨シーズンの時点で、遅攻が上手くいかず相手に守り切られてしまう試合が少なくなかったという事実だ。
それはデータにもはっきりと表れている。
昨シーズンも一昨シーズンも、ブンデスリーガでは1位がバイエルンで、2位がドルトムントだった。そして両チームの対戦成績は、いずれのシーズンも五分だった。つまり、バイエルンとドルトムントを分けたのは、単純に下位チームとの試合でいかに勝ち点を稼いだかの差である。下位チームとの試合で昨シーズンは勝ち点を19も、一昨シーズンにいたっては勝ち点を25もドルトムントはバイエルンより多く失っていた。
そうした昨シーズン以前からの課題に手をつけないまま、今シーズンを迎えてしまったことこそが現在の窮状の根本にある。そこへさらに開幕前にレバンドフスキが去り、怪我人も続出。対戦するチームのドルトムント対策も進んだ結果、課題は問題へと発展して、一時は最下位に低迷するほど苦しむことになったのだ。