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ドルトムントの絶不調を徹底解剖!
全ては財政状況の改善から始まった。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/03/27 10:40
復調の気配を見せている香川真司だが、チームを覆う空気は決して好転したわけではない。ELを逃せば戦力の大整理も必要になるだけに、なんとしてもそれは避けたい状況だが……。
クロップが反対したマンジュキッチの獲得。
どうして、こんなことになってしまったのか。
つきつめれば原因は一点に尽きる。チームマネージメントの失敗だ。
現在のドルトムントは、ヴァツケCEO、ツォルクSD、クロップ監督の3人が作り上げたチームだ。新たに選手を獲得する際には、3人の意見が一致して初めて実行に移される。
例えば昨シーズン終了後、ドルトムントはバイエルンを離れたがっていたFWマンジュキッチの獲得に向かって動き出した。ヴァツケCEOとツォルクSDはこの移籍に乗り気だったものの、クロップ監督がこれに反対したという。
理由は、当時所属していたバイエルンのグアルディオラ監督に公然と反旗を翻したマンジュキッチの性格に疑問を抱いたからだという。ただ、バイエルンの前に所属していたヴォルフスブルクではそのような問題は起こしていなかったし、2010年からブンデスリーガでプレーし経験も豊富。さらにバイエルンで3冠を達成したときも、ヴォルフスブルクで最終節で残留を決めたときも、変わらずピッチ上で献身的な働きを見せていた。
何より、彼は前線で相手を背負ってボールを収めたり、味方のために左右のスペースに流れて起点となるプレーが出来る。ドルトムントのサッカーに適応した可能性は、かなり高そうに見えた。
ゲッツェを失ったシーズンに、破たんは始まった。
もっとも、マンジュキッチの移籍に関する判断は、氷山の一角でしかない。
ドルトムントは、選手獲得に関する旧型モデルから新型モデルへの移行が出来ていないのだ。
まず、選手の獲得についてほころびが見え始めたのが'13-'14シーズン前のことだった。3700万ユーロを支払うクラブが現れれば無条件で移籍させるというゲッツェの契約条件に目を付けたバイエルンが、満額を支払って移籍が成立した時だ。
ここから、クラブの補強策に破たんが生じた。
'13-'14シーズンを前に、移籍金を支払ったおもな選手は以下の通り。
MFムヒタリアン 2750万ユーロ
FWオーバメヤン 1300万ユーロ
DFソクラティス 990万ユーロ
'13-'14シーズン途中、冬に加入したMFヨイッチには220万ユーロがかかっている。
このシーズン、移籍金の収支は542万ユーロのマイナスだった。