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ドルトムントの絶不調を徹底解剖!
全ては財政状況の改善から始まった。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2015/03/27 10:40

ドルトムントの絶不調を徹底解剖!全ては財政状況の改善から始まった。<Number Web> photograph by AFLO

復調の気配を見せている香川真司だが、チームを覆う空気は決して好転したわけではない。ELを逃せば戦力の大整理も必要になるだけに、なんとしてもそれは避けたい状況だが……。

放出した選手と同じポジションの選手を慌てて補強。

 また、香川を獲得したあとの動きも不可解だ。中盤の余剰人員を減らすべくサイドのMFを本職とするホフマンをマインツへレンタル移籍させたが、そのホフマンは序盤戦、マインツの攻撃をけん引するほどの活躍を見せていた。

 さらにシーズン前半戦が不調に終わったことで、今度は冬のマーケットでサイドのMFとしてザルツブルクから1200万ユーロを支払ってカンプルを獲得したのだ。獲得を決めた時点で、1月に行なわれるアジアカップのために香川が最大で1試合の欠場を余儀なくされ、ムヒタリアンが負傷していたからだ。しかし、ムヒタリアンはウインターブレイク明けの初戦で途中出場を果たしており、慌てて獲得に動くほどだったのかは大きな疑問が残る。そもそも、カンプルを慌てて冬に獲得するのであれば、どうしてホフマンをあの時点で放出したのか。

 例をあげればきりがないが、ドルトムントのここ2シーズンの移籍については、首を傾けたくなることばかりなのだ。市場価格よりも高い移籍金を払って選手を獲得し、選手のタイプよりも数にこだわった補強を進めてしまった。

旧型モデルは「若さと野心」。では新型は?

 優勝した'10-'11シーズンに受けたインタビューの中で、ツォルクSDは補強方針の「旧型モデル」についてこう話している。

「'90年代には、実力の伴わない選手に大金をつぎ込んでいた。当時と今('10-'11シーズン)とでは、方針が大きく違う。若くてハングリー精神があり、成長できる可能性を持つ選手を取ることにしたんだ」

 旧型モデルは「若さと野心」がテーマだったのだ。

 では「新型モデル」のポリシーはと聞かれても、明確なものはない。むしろ、“CLの常連っぽい”お金の使い方をしているようにしか見えない。

 例えば、旧型モデルのもとでチーム編成を進めていた'10-'11シーズン開幕前にはレバンドフスキ獲得に450万ユーロを、セレッソ大阪に育成補償金35万ユーロを支払ったくらいで、このシーズンにリーグタイトルを手にしている。

 6130万ユーロのマイナスでスタートした今シーズンは、それに比べて惨憺たる状況であることに疑いようがない。

【次ページ】 財政状況の改善が、迷走の始まりだった。

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