F1ピットストップBACK NUMBER
ケータハムF1チームついに消滅――。
最後まで忠誠を尽くした裏方たち。
posted2015/02/28 10:40
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
新しいシーズンへ向けて、各チームが新車を走らせたスペイン・ヘレスでの合同テストが終了した翌日の2月5日、寂しい知らせがロンドンから舞い込んできた。
それは、昨年小林可夢偉が所属していたケータハムの管財人が、チームの資産を売却するというニュースだった。
競売を主催するワイルズ・ハーディー社が「ケータハムの管財人から、チームの資産を売却するよう命じられた」と発表。
競売にかけられるのは、2014年マシンを含むレース機材やそのマシンや機材をサーキットまで輸送するトランスポーター、さらにファクトリー内にあるドライビングシミュレーターなどである。
これにより、チームが再建を事実上、断念したことが判明。2010年に誕生したチームは5年で、その短い歴史に幕を下ろした。
しかし、それは手続き上の話であって、実際には発表より2カ月以上も前に、ケータハムは自らの活動にピリオドを打っていた。いつかと言えば、彼らにとって最後のレースとなった2014年の最終戦アブダビGPである。
ケータハムはなぜ昨季最終戦に出場できたのか?
ケータハムはこのアブダビGPにすら参加できないかもしれない状態だった。
10月中旬に行なわれた第16戦ロシアGPを終えた後、チームは管財人の手に渡り、続く2戦を欠場。だが、チームは最終戦への出場を目指した。
同じく経営破綻していたマルシアが、最終戦のグリッドに着くことなくシーズンを終えたにもかかわらず、である。
ケータハムが最終戦に出場できなければ、残されたチームスタッフは無職となる。その前にチームを抜け、できるだけ早く次の仕事を見つけることも可能ではあった。現にアブダビでは、違うチームで仕事する元ケータハムや、元マルシアのスタッフもいた。
そんな中、チームが最終戦に復帰することを信じて最後までケータハムに残った者たちがいた。
そして、その願いは通じ、ケータハムは管財人が立ち上げた“クラウドファウンディング”という募金システムによって、なんとか最終戦アブダビGPに帰ってくることができたのだ。