プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンUの現実感、アーセナルの理想。
プレミア上位陣の共通点は「攻撃」?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2014/12/28 10:40
今季バルサから移籍、チーム内最多アシストを記録するなど、首位チェルシーの中心として活躍するセスク・ファブレガス。
優勝候補はチェルシーとマンCの2頭立てか。
アーセナルは、言わずと知れたアーセン・ベンゲル監督のパスサッカー集団。ポチェッティーノが指揮を執るトッテナムを得失点差で抑え、6位でクリスマスを迎えている。
では、本当に攻撃力だけで勝てるのかと言うと、現実はそれほど甘くはない。優勝争いはチェルシーとマンCの2頭立てという見方が圧倒的だ。その理由は、安定性の高いチームパフォーマンスを可能にする攻守のバランスの良さ。それぞれ17節を終えて13失点と14失点と、両軍は守備力でもトップクラスなのだ。
マンUの元DFで現テレビ解説者のギャリー・ネビルは、「プレミアで優勝を争うには、技術の高さに敵が兜を脱ぐチームになるか、自由にさせてもらえずに敵が嫌がるチームになる必要がある」と言う。そして双方の「ミックス型」、つまり相手を圧倒できない試合展開でも、リードを奪えば敵の長所を消して確実に勝てるチームとして、チェルシーを優勝候補の筆頭に挙げている。
好例が12月22日のアウェイでのストーク戦(2-0)だ。今季のストークは、バルセロナ産のボージャン・クルキッチを獲得したことからも分かるように、就任2年目のマーク・ヒューズ監督の下で、「ロングボール派」から「ショートパス派」への変身が進んでいる。とはいえ、フィジカルに恵まれた選手が多いチーム事情は変わっていない。この日も、ボージャンの手前では身長2mのピーター・クラウチが1トップを務めた。
相変わらずの策士ぶりを見せ付けるモウリーニョ。
そこでモウリーニョは、空陸の双方でストークを封じる策を取った。センターハーフのセスクを2列目に押し上げて、中盤の底はネマニャ・マティッチとジョン・オビ・ミケル。両ボランチは、ボージャンの動きを封じると共に、クラウチのポストプレー後のボールにも素早く反応して危機を未然に防いだ。サイドから放り込まれたクロスは、ジョン・テリーとギャリー・ケーヒルのCBコンビがことごとくヘディングで跳ね返した。
前半早々のCKからテリーのヘディングで先制し、終盤にエデン・アザールのスルーパスに反応したセスクが追加点を決めるまでの時間は76分。ポゼッションでは僅かにストークが上回ってもいたのだが、チェルシーは危なげなく3ポイント獲得に成功した。
対照的に、フィジカルが弱点で守備が甘いアーセナルは、12月上旬に乗り込んだストークで、後半にPKを含む2点を返したものの敵の術中にはまって敗れた(2-3)。キックオフ直後に始まった3失点は全て前半。クラウチに1ゴール1アシストを許し、微妙なオフサイドの判定に救われていなければ、ボージャンには後半に自身2点目を決められ、反撃を試みる前に4-0とされているところだった。