プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンUの現実感、アーセナルの理想。
プレミア上位陣の共通点は「攻撃」?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2014/12/28 10:40
今季バルサから移籍、チーム内最多アシストを記録するなど、首位チェルシーの中心として活躍するセスク・ファブレガス。
「守れないチーム」の指揮官の立場は?
それでも、攻撃の美学にこだわる指揮官は、敗戦後にも前向きな発言に終始しがちだ。ベンゲルとロジャーズも例外ではない。得点を奪い合ったというよりも得点を与え合った直接対決後、引分けに持ち込んだロジャーズが「素晴らしいパフォーマンスだった」と言えば、ベンゲルも「妥当な結果だ。悪くはない」と言って納得の1ポイント獲得を強調した。
公の場でのポジティブなスタンスは間違いではない。但し、舞台裏では弱点を認識して改善を図り、その成果がピッチ上に反映されることが望ましい。同じ過ちを繰り返すアーセナルやリバプールでは、「攻撃」の名の下に「守備」が疎かにされているようにさえ感じられる。
攻撃的スタイルの魅力は、誰もが認めるところだ。だからこそ、長らく「守高攻低」と言われたプレミアでも、攻めの姿勢を取るチームが増えている。アーセナルやリバプールのように若い主力が多いチームでは、ポリシーを貫いて実戦で育てる覚悟もたしかに重要だ。
しかしながら、監督とは「結果商売」の責任者でもある。特に目標レベルが高いビッグクラブでは責任重大。痛みを伴うチーム作りに十分な時間が与えられ続ける保証はない。アーセナルとリバプールにとっては最低ラインであるはずのCL出場権維持が怪しいとなれば、クラブのフロントやファンの信頼が揺らいでも不思議はない。
ベンゲルには過去18年間の功績、ロジャーズには昨季の実績があることから、シーズン中の解雇という非礼はないだろう。だが、プレミアを代表する「美学求道師」2名は、「守れないチーム」の指揮官として、来季続投の是非が問われる中で後半戦を迎える。