スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
コントにまでなった「買い物下手」。
バルサの補強が軒並み失敗!
posted2014/12/31 10:50
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
店先まで人が溢れかえっている街角のバル。シャンパン片手に喜びを分かち合う人々の間を縫ってカウンターに辿り着いたアンドニ・スビサレッタ(バルセロナのスポーツディレクター)が、店主のフロレンティーノ・ペレス(レアル・マドリー会長)と抱擁を交わす。上機嫌のペレスとは対照的に、悲しげな表情を浮かべたスビサレッタはシャンパンの勧めを断り、一杯のカフェを注文する。
スビ「これでもう補強はやめるんだろ?」
ペレス「やめるもんか。あんなに安かったんだから。それにみんなの幸せそうな顔を見てみろよ」
バルの客たち「クロースが“当たった”! クロースが“当たった”!」
スビ、泣きそうな顔で「……お勘定を頼む」
ペレス「3000万1ユーロだ」
スビ「カフェ一杯で3000万1ユーロ?」
ペレス「いや、カフェ代は1ユーロ……3000万ユーロはこれだ」
そう言ってペレスがおもむろに差し出したのは「スビ」と書かれた赤い封筒。その中に入っていたのは、何とアルバロ・アルベロアの写真だった。
「アルベロアを3000万ユーロで……」
そう言ってスビサレッタは感極まり、感謝の言葉と共に泣き崩れる――。
これは、ものまね芸人がスポーツ界の時事ネタをコントにする人気テレビ番組『クラコビア』にて、クリスマス宝くじのテレビCMがパロディー化されたものだ。
本家は心温まる話なのだが……。
バルの店主が宝くじのゴルド(1等)に当選するも、常連客のマヌエルは「どうせ当たらないよ」と共同購入の申し出を断っていた。合わせる顔がないと思いつつ、妻に促され渋々祝福に訪れたマヌエルに対し、店主はカフェ代の1ユーロに加えて20ユーロを請求しつつ、赤い封筒を差し出す。その中には事前にマヌエルの分として買っておいた、一枚の当たり券が入っていた。
本物の方はそんな心温まるストーリーなのだが、クラコビアのコントではこれがコミカルかつシニカルにアレンジされている。
トニ・クロースの獲得を“大当たり”と喜ぶマドリディスタたちで賑わうペレスのバル。バルトメウ会長に促され渋々祝福に訪れたスビサレッタに対し、ペレスは“僅か3000万ユーロ”でパフォーマンスの低下が著しい控えDFを譲ると言う。そんな馬鹿げたオファーを受け、泣きながら感謝するスビサレッタ。その滑稽な姿は、彼が行なっているチーム補強に対する痛烈な皮肉に他ならない。