Jをめぐる冒険BACK NUMBER
技術は練習から。では自信は何から?
武藤嘉紀が本田圭佑に学ぶべきこと。
posted2014/12/12 16:30
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
ルーキーのベストイレブン選出は'98年の小野伸二、'99年の中澤佑二に続いて3人目、実に15年ぶりの快挙だという。
新人最多得点タイ記録となる13得点をマークしたFC東京の武藤嘉紀のことだ。
そんな彼の口から飛び出した「チャンスが怖かった」という言葉――。
何年前の話なのかと思うかもしれないが、彼がチャンス恐怖症に陥っていたのは、今シーズンの序盤戦、今からわずか8カ月ほど前のことなのだ。
「ゴール前にいても『パスが来るの、怖いな』、『これを外したら、またみんなに言われるんだろうな』というようなことを考えてしまって……」
自信がないからプレーが消極的になり、ボールも簡単に奪われ、すべてがマイナスへと向かう悪循環。
好循環をスタートさせた初ゴール。
だが、ようやく生まれたリーグ初ゴールがすべてを変えた。
4月19日に行なわれた8節のセレッソ大阪戦。長い距離を走ってゴール前に飛び出すと、高橋秀人のヒールキックパスを受け取り、勢いそのままでDFをブロックしながら左足で蹴り込んだ。
「あのゴールは、カウンターの中で自分のスピードを生かすことができた。これまでは似たような展開でも中を見てパスを出してしまって、ゴールに繋がらないことが多かった。でもあの試合では、もうゴールしか見えなかった。ボールを受けてからドリブルで進入していって、軌道が頭の中に全部描かれていて、その通りにゴールが決まって。ホッとしたのと同時に自信がついたゴールでした」
難産の末にマークした初ゴールをきっかけに自信を取り戻し、結果が付いてくるからより一層自信が膨らんでいく――。アギーレ監督の御前試合で奪った2ゴールも、ベネズエラ戦で叩き込んだ代表初ゴールも、こうした好循環の中で生まれた。
「面白いもので、自信がつくと『チャンス、来い!』って思えるし、『俺ならできる』と思えるんです。プロになる前『サッカーはメンタルだって言うけれど、本当かな?』って思っていたんです。でも、今は本当だったなって」