Jをめぐる冒険BACK NUMBER
技術は練習から。では自信は何から?
武藤嘉紀が本田圭佑に学ぶべきこと。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2014/12/12 16:30
大久保嘉人、豊田陽平、マルキーニョスに続きJ1でゴール数4位タイとなった武藤嘉紀。守備でも存在感を発揮するタイプで、代表でもアギーレ監督のお気に入りだ。
本田圭佑を題材に解説された“自信”の真実。
あるとないとで、ネガティブにもポジティブにもなる。そんな厄介でいて頼もしい“自信”についての面白い記述がある。
『Number』862号に掲載された記事の中にある、名古屋グランパスのスカウト、巻佑樹がスカウト目線で本田圭佑を分析しているコメントがそれだ。
「10点満点で、スピードは3。あとは全部7。で、自信は30。その自信ですべての能力値をどーんと引き上げることができるんですよ。逆の選手は世の中にたくさんいます。すべての能力が8なのに、自信が2。そうすると、試合ではすべての能力が3に下がる」
本田の分析もさることながら、自信というものの効用がうまく表現されていて、このコメントには「なるほど」と深くうなずかせるものがある。
このレーダーチャートに倣えば、武藤のフィジカルはプロ入り当初から満点に近く、スピードや得点力、テクニックも及第点以上のものがあったが、シーズン序盤はサイドハーフからFWにコンバートされたばかり。ゴールが奪えていなかったこともあり、自信はかなり低い数値まで落ち込んでいたのかもしれない。
それがひとつのゴールをきっかけに自信が膨らんだ。前向きなメンタルでトレーニングに励めるようになり、さらに結果が付いてきたことで自信の数値が一層高まった。それによって他の数値も引き上げられた――そんな分析ができそうだ。
佐藤寿人が11試合ゴールに見放された時に考えたこと。
技術やフィジカルは、すこしずつではあっても、日々のトレーニングによって右肩上がりに成長していく。急激に高まることはないが、急激に落ち込むこともない。
だが、自信はあっという間に膨らむ一方で、いったん揺らぎはじめるとたちどころに失われることがある。
あの佐藤寿人も、積み重ねた自信が揺らいだことがあったという。
それは7年前。サンフレッチェ広島がJ1の残留争いに巻き込まれてしまったこの年、佐藤はゴールから11試合も遠ざかった時期がある。これほど長い間ゴールが奪えなかったのは、初めてのことだった。
「なんで点が取れないのか、自分でも分からないんです。シュートも悪くない。コンディションも悪くない。それなのに今日も取れなかった、というのが4試合、5試合と続いていくと、積み重ねてきた自信が少しずつ揺らぐんです。でも結局、自分がゴールすることでしかスランプから抜け出す方法はない。だから、日々のトレーニングを通じて、自信を保ち続けなければならない」
佐藤がスランプを克服し、その後メンタルもしっかり保っていることは、11シーズン連続ふた桁得点という偉業が証明している。