プレミアリーグの時間BACK NUMBER
W杯を決めたホジソンの積極采配!
イングランドに漲る久々の期待感。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/10/24 10:31
グループHの最終節ポーランド戦に2-0で勝利し、試合後に握手するホジソン監督(右)とスタメンに抜擢されたタウンゼント。
10月15日の予選最終節で、イングランドの2014年W杯出場が決まった。4日前の第9節から、勝たなければならなかったホームでの2連戦。まずは、モンテネグロを退けて(4-1)グループHでの2位以上を確定し、続くポーランド戦にも勝利(2-0)して1位通過を果たした。ようやくの予選突破ではあったが、最後は力強く、本選の地ブラジルへと駒を進めた。
そして、同時にロイ・ホジソン監督のイングランドとしても、ついに前に進んだと言える。
ホジソンは、昨年5月に4年契約で就任した。66歳のベテラン監督に課された最大の任務は、昨夏のEURO2012と来夏のW杯で成果を残すことではなく、EURO2016以降に「イングランド復権」を実現するための基盤作り。近年の国際大会で「受身」のサッカーで限界を露呈してきた母国代表を、「自発的」なサッカーへのレールに乗せることにあるはずだった。
ところが肝心のこの点に関して、ホジソンの評価は下降線を辿っていた。もちろん、いかに過渡期の代表を預かる監督とはいえ、W杯予選敗退は許されなかっただろう。それにしても、自他共に認める堅守志向の指揮官は、内容よりも結果に対する保守的な姿勢を前面に押し出し過ぎた。予選の序盤こそ、国内のメディアや識者たちも、ホジソン采配を「無難」と評するに留まっていたが、次第に「見所無し」と非難されるようになっていった。
「代表のユニフォームを着ると何故こうなってしまうのか」
最たる例が、9月の予選第8節ウクライナ戦(0-0)だ。結果という意味では、グループ内のライバルを相手に、敵地での1ポイント獲得は悪くはない。イングランドは、2試合を残して無敗のグループ首位でもあった。だが、僅差で予選突破を争うウクライナ、モンテネグロ、ポーランドと、これで計4試合の全てが引分けとなった事実が、残る2試合で「必勝」を強いられる原因にもなった。
加えて、攻撃が形にならなかったスコアレスドローを、「クオリティの高い内容だった」と振り返ったホジソンに対する、半ば怒りに近い驚きもあったのだろう。国内各紙では「これでは代表の行く先にブラジルが見えたとしても、肝心の将来が見えない」という論調が目についた。元代表エースのガリー・リネカーなどは、「酷い。選手たちは代表のユニフォームを着ると何故こうなってしまうのか」と、不満と落胆を呟かずにはいられなかった。