プレミアリーグの時間BACK NUMBER
W杯を決めたホジソンの積極采配!
イングランドに漲る久々の期待感。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/10/24 10:31
グループHの最終節ポーランド戦に2-0で勝利し、試合後に握手するホジソン監督(右)とスタメンに抜擢されたタウンゼント。
将来への希望を国民に与えたことが最大の達成。
予選突破を決めた直後のホジソンは、ポーランドが自陣内に侵入する度に「生きた心地がしなかった」と語っている。リスクを嫌うはずの指揮官が、不安を堪えて勝ちに行く勇気を示したからこそ、『サン』紙にコラムを持つハリー・レドナップ(現QPR監督)をはじめ、メディアが「現体制でのベストゲーム」と讃える内容でW杯出場を決めることができたのだ。「痛みなくして前進なし」と言うが、痛みに耐えれば将来があり得るという希望を国民に与えたのが、今回の予選ラスト2試合だった。
ホジソンの変身ぶりには、予選突破に向けて尻に火がついていたことがあるのかもしれないが、願わくば、今後も前向きな采配を継続してもらいたい。愛国心溢れるイングランド人の代表監督としては、本選に出場するからには結果を残したいという意識も強いだろう。
だが、チームの運命は、今回の2試合でも要所で違いを見せたルーニーの出来次第というのが、相変わらずの現実だ。課題のポゼッションも、より足下の確かな新世代が主力となるまでは、根本的な解決は難しい。世論的には、各紙の予想を総合すれば、ベスト8進出を果たせれば上々と思われる。つまり、国際大会の本番で将来を意識した采配を振るっても許される立場にあるというわけだ。
イングランドは、W杯の更に先を見つめて歩き出す。
例えば、予選で定着したギャリー・ケイヒルとフィル・ジャギエルカのCBコンビは、共に体を張って守るタイプであり、機動力と後方からの展開力に乏しいという観点から、理想的とは言い難い。本番までの親善試合を通じ、クリス・スモーリングとフィル・ジョーンズの若手コンビに、最終ラインの中央でコンビを組ませる機会を増やしても良いだろう。
中盤に関しても、ベテラン勢のうち、ジェラードはキャプテンとして、キャリックは高いポゼッション能力の持ち主として欠かせないとすれば、ランパードの経験値とミルナーの守備力を犠牲にしても、エバートンで売り出し中のロス・バークリーや、ウェストハムで素行改善が期待されるラベル・モリソンに、チャンスを与えるべきかもしれない。バークリーとモリソンは、タウンゼントと同じく、高い個人技と連係能力を備えた「スペシャル」な新世代だ。
W杯出場を決めたイングランドには、将来への期待感が満ち始めている。水先案内人となるべき監督自身が、「来夏には非常に攻撃的なスタイルを披露できると考えたい」と、本格的に安全第一の殻を破る意志を示すようになった。ホジソンのイングランドは、ブラジルの更に先を見つめて歩き出したようだ。