詳説日本野球研究BACK NUMBER
4強に揃った顔ぶれが表す変化。
高校野球の勢力図に何が起こった?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/08/21 10:31
予想外の乱調で1回戦で姿を消した浦和学院の2年生エース・小島和哉(左)。仙台育英相手に9回1死までこぎつけるも左足がつり降板。10-11のサヨナラ負けに泣き、森士監督に宥められた。
準決勝に進出した顔ぶれが、岩手(花巻東)、山形(日大山形)、群馬(前橋育英)、宮崎(延岡学園)という4校だったことが、今夏の甲子園大会を象徴している。
大会前、優勝候補は仙台育英、常総学院、浦和学院、日大三、横浜、大阪桐蔭、済美、明徳義塾など上位進出の常連校だった。このうち明徳義塾、常総学院は準々決勝で、横浜、大阪桐蔭、済美は3回戦で、仙台育英は2回戦、浦和学院、日大三は初戦で敗退した。
1回戦で常総学院対北照、仙台育英対浦和学院、2回戦で明徳義塾対瀬戸内、常総学院対仙台育英という強豪同士の星の潰し合いがあったことは確かだが、4強進出中、3校が優勝経験のない県の代表校だったことは偶然ではない。勢力図が変わりつつあるのだ。
'04~'05年は春も含めて優勝経験のなかった南北海道の駒大苫小牧が2連覇を飾り('06年も準優勝して3年連続決勝進出)、'07年優勝の佐賀北は公立校としては'96年の松山商以来11年ぶりの優勝で、'09年には日本文理が新潟勢としては初の決勝進出、'10年の興南は沖縄勢としては初の夏制覇(この年春夏連覇)、さらに'11~'12年にかけて青森の光星学院(現八戸学院光星)が2年連続決勝進出、春も入れれば3季連続決勝進出の偉業を果たした。
春の王者、浦和学院は殴り合いの末に仙台育英に屈した。
北海道、佐賀、新潟、沖縄、青森はほんの少し前までは「強豪県」とは呼ばれていなかった。それが年によって浮き沈みはあるが、この10年間、夏の大会で上位進出を果たしているのだ。勢力図が変わりつつある、と言いたい気持ちがわかってもらえると思う。
初戦で敗れた春の王者、浦和学院はノーガードの殴り合いに持ち込まれ、10対11の僅差で仙台育英の前に屈した。
安定感では大会屈指と言われた2年生エース、小島和哉が9四死球を与える不測の事態が発生。山根佑太、高田涼太の中軸も1安打に終わり、強打、強打の波状攻撃で相手を粉砕してきた浦和学院の野球ができなかった。一発勝負の夏の戦い方がいかに難しいか、春の王者が身をもって教えてくれた。