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重本監督を乗せると、チームも乗る!
延岡学園、宮崎県勢初の決勝進出。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/08/21 18:50
4年前に延岡学園の監督に就任した重本監督。まだ31歳の若い監督が、宮崎県勢として初の快挙を成し遂げた。
嘘偽りがない――。
延岡学園の重本浩司監督のインタビューは清々しい。
「横瀬を先発に選んだ理由は、なんとなくです」
8月21日、花巻東(岩手)との準決勝の試合前、重本は先発に不調の背番号「1」横瀬貴広を抜擢した理由をこう答えた。ちなみに、横瀬は準々決勝の富山第一戦は途中から登板し、3回3失点でマウンドを降りている。
「彼だけが、まだいいピッチングをしていないので、思い切って起用しました。もし横瀬の内容が悪ければ、3分の0でも代えてやりますよ」
野球に対して、選手に対して、正面からぶつかっている。
その言葉や思い切った采配が選手たちを引っ張り、今の延岡学園の強さを支えている。
「思ったことを本当にズバっと言う。生活面の指導も厳しいですけど、野球一筋、そんな監督さんです」と捕手の柳瀬直也が言えば、「読めない監督さん。でも、いい方向に導いてくれる。腹をくくってサインを出すし、勝負をかけてくる」と主将の坂元亮伍も続く。
実は、この夏はエースを故障で欠いていた延岡学園。
この日の先発に何よりも驚いたのは、横瀬本人だっただろう。だが、横瀬は驚いたのち、ブルペンで重本より一喝され、気持ちを引き締めた。
そして横瀬は、9回を投げて被安打3、三塁を踏ませないピッチングで、花巻東の打線を完封したのである。
「あっという間でしたね。これが横瀬のいい時のリズムなんです。でも、まさかこんなピッチングをしてくれるとは思いませんでした。県大会が終わった時、投手陣は全国で通用しないと言ったんですが、『大誤算』です。今、チームは投手陣が引っ張っていますから」
実は、延岡学園の投手陣は、大黒柱を欠いている。
宮崎県大会に入る前、エースを務めるはずの上米良(かんめら)有汰が故障離脱し、控えだった3人の投手、左腕の横瀬と、右の本格派の奈須怜斗、右サイドの井手一郎で、宮崎大会を乗り切り、甲子園に乗り込んできていたのだった。